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 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 第1回では、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」の盲点を明らかにした。第2回からは3回にわたって全産業の物流部門が講じるべき地球温暖化抑止対策を考える。その①となる今回は、考察の前提として、地球温暖化の現状と2030年までに気温上昇を1.5℃以下に抑えられなかった場合、地球環境に何が起こるかを解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 「2024年物流危機」は“2025年”に訪れる!~悪夢の年末・年度末
■第2回 「炭素予算」が底をつく――全産業の物流部門が直視すべき地球の危機(本稿)
■第3回  2050年排出ゼロへ、〈再エネ革命/RE100〉が生む巨大な安全保障/地政学的価値


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2023年夏の記憶を人類は刻む

 去年の夏の、「お願いだから、冗談はやめてくれないか?」レベルの暑さの記憶を、まだ皆さんは大切に保存しておられるだろうか。夏の平均気温が国内観測史上最高値を更新した日本に限った話ではなく、7月16日に中国・新疆ウイグル地区で「52.2℃」を記録したのを筆頭に、世界各地で50℃前後のとんでもない熱波と、その結果としての大雨・山火事被害が続出した。

 世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」は7月の世界平均気温が観測史上最も暑かったことを、独ライプチヒ大は「過去12万年間で例のない暑い1か月」になったことを発表。年末にはWMOが「2023年は観測史上最も暑い1年に」と続報、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)のサイモン・スティル条約事務局長は「今年(2023年)は過去12万5000年で最も気温の高い年となる見通し」と踏み込んだ。

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長の言葉通り、「地球温暖化(Global Warming)の時代は終わり、地球沸騰(Global Boiling)の時代が到来した」のである。

「10万年単位で見ればこの程度の気温上昇は何度もあった(だから騒ぐな)」と気候変動の危機を否定していたグループの妄論は粉砕された。そもそも彼らが主張した気温変化は千年・万年をかけた波動だったのに対し、今回は産業革命期以降のわずか150年間の超特急の変化である*1

*1 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)コラムより https://www.jamstec.go.jp/sp2/column/03/

 グラフで描けば自然変動にはありえない文字通りの「垂直立ち上げ」であり、人為的な温室効果ガス排出増加をその主因とみることで、科学者たちの見解は一致している。

 だが、人為的な営為の結果であるならば、人為で止められないことはないはずだ。だからこの悲報には、プラス面もある。

「もしもこのまま、野放図にGHG(CO2を筆頭とする温室効果ガス)排出を続けていたら、地球はどうなってしまうのか?」のシミュレーション結果を人類に示す、強烈な警鐘となってくれた(と、私は期待を込めて思う)からである。