いまや世界最大規模のモーターショーとなった「北京国際モーターショー」。数々の電動車が世界中のメーカーから発表される中、トヨタ自動車もバッテリーEV(BEV)の新型車「bZ3C」ならびに「bZ3X」を世界初公開した。その一方で、中国のIT大手・テンセントとの提携を発表。果たしてこの発表からは何が読み取れるのか?自動車ジャーナリスト 大谷 達也が解説する。
世界有数のアジア企業同士の提携
4月25日、トヨタ自動車とIT大手“テンセント(騰訊控股)”の提携について、日経やロイターなどが一斉に報じた。両紙ともに「中国で製造もしくは販売する自動車にテンセントのAI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの技術を活用する」との内容だ。
不思議なことに、これだけ大きなニュースにもかかわらず、4月25日現在、この提携に関するプレスリリースをトヨタは配信していない。しかし、すでに明らかになっている事実と、自動車のデジタル化に関連する業界の動向を照らし合わせると、この報道の意味するところが自然と浮かび上がってくる。
まずは、テンセントが世界でも有数のグローバルIT企業であることを認識すべきだろう。1998年、中国・深センで誕生した同社は、インターネットを用いたメッセージ・サービスで創業。その後、急速に事業を拡大していき、現在ではクラウドコンピューティング、ゲーム、スマホアプリなどで世界トップクラスの規模に成長している。なお、ブルームバーグが今年1月に報じたところによれば、テンセントの時価総額が3220億ドルで、TSMC、トヨタ自動車、サムスン電子に続くアジア第3位の地位にあるという。ちなみにFacebookの時価総額は4510億ドル(4月26日現在)なので、IT業界ではそれに迫る規模と捉えていいだろう。