モノづくりビジネスにおいて、世界的に主流になりつつある「オープンイノベーション」。ところが日本企業では依然、全てを自社で行う「自前主義」から脱却できずに商機を逃すケースが多く見られる。本連載では『学びあうオープンイノベーション 新しいビジネスを導く「テクノロジー・コラボ術」』(古庄宏臣・川崎真一著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集し、オープンイノベーションを円滑に進めるために心がけるべき他社との「コラボ術」について解説する。
第2回では、オープンイノベーションを進め、成果を分け合うために必須となる企業のスタンスを考察する。
<連載ラインアップ>
■第1回 なぜソニーは、世界最強の「CMOSイメージセンサー」を開発できたのか
■第2回 オープンかクローズか、過剰な「秘密主義」がモノづくりにもたらした限界とは?(本稿)
■第3回 NTT×東レの機能素材「hitoe」、共同開発を実現させた“奇策”とは
■第4回 セブン-イレブンの「5度目の正直」、コンビニ淹れたてコーヒーを成功に導いた学びとは
■第5回 新規市場開拓へ、フィリップス、ユニ・チャーム、LIXILが選んだ意外なパートナー企業とは?
■第6回 「ジャポニカ学習帳」のショウワノートと提携、廃業寸前の印刷所が生んだ奇跡の「おじいちゃんのノート」
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成果を独占することが当たり前になってはいけない
なぜ両者が勝者になるのは難しいのか。筆者の経験から考察すると、それは自前主義の延長上で「自分たちが成果を独占することが当然」と考えてしまうことに原因があります。頭では理解していても、根底にある自前主義の思想が変わっていないのです。自前主義のままでは、オープンイノベーションの相手と協力することはできません。
これまでの日本のモノづくり企業は、ピラミッド構造によるビジネスを得意としてきました。つまり、どこか特定の企業がピラミッドの頂点となり、その企業から下請け企業に仕事が発注され、さらにその下請けへと発注される構造です。これが日本の高度経済成長期を支え、一糸乱れぬ強固なモノづくりを実現してきました。
オープンイノベーションは、このような上下関係によるモノづくりとは根本的に異なります。複数企業が「対等な関係」で提携することに価値を見出すのです。しかし、多くの日本企業は、この「対等な関係」を基軸とするオープンイノベーションにおいて、各社の「立場」を理解してこなかったと考えられます。加えて「対等な関係」になれる相手と組んでこなかったことも考えられます。「対等な関係」になれる相手は、企業規模の大小とは関係ありません。
大企業と中小企業が共同開発する場合、大企業側がピラミッドの頂点にいるという考えから、大企業側から中小企業側への委託開発という位置づけにするケースが見受けられます。その成果としての知的財産権は、委託した大企業側にすべて帰属させることが多いです。開発内容によっては、それが正しい場合もあるでしょう。
例えば、特定の部品を製造するために大企業側がすべて設計し、中小企業側はそれに基づいて製造しただけなら、発明には該当しないかもしれません。この場合、それを製造するためのノウハウが中小企業側に残されるのであれば、必ずしも不平等とは言えないでしょう。しかし、特許を大企業側がすべて独占すれば、中小企業側は特許を持つその大企業のためだけにしか、部品を製造、販売できなくなってしまいます。