今年のゴールデンウイークには海外旅行の行き先は日本と考える中国人旅行者が増えた〔出典〕Costfoto/NurPhoto/共同通信イメージズ

 ゴールデンウイーク(GW)が終わり、中国国内では「GW期間中の旅行者数や旅行支出額などがコロナ前を上回り、旅行関連の消費が好調である」ことを示すデータが相次いで発表された。

 だが、中国国内の新聞やSNSなどで多いのは旅行消費の回復に関する記事よりも「中国人観光客が再び日本で爆買いするようになる」という記事だった。

 筆者は今年の3月に1年ぶりに瀋陽に帰省したが、その際によく聞かれたのは「日本でのビジネスチャンスや投資チャンスについて」。4月から幾つかの訪日団と会って話をした際にも「日本企業から学びたい。日本企業との連携を図りたい」という企業や地方政府の関係者が多かった。

 今回は「日本への関心を高めている中国の今」についてお伝えしたい。

中国人観光客による爆買いに復活の兆し

 この3月、著者が瀋陽に帰省したときに親戚や知り合いから「今年こそ海外旅行に行きたいが、東南アジア(シンガポール・タイ・マレーシア)と日本、どっちにするか悩んでいる」と言われた。

 このように考える人は多かったが、GWに入る前になると、海外旅行の行き先は日本と考える中国人旅行者が増えたようだ(中国の旅行関連の予約サイトで「中国人が今、一番行きたい国・地域は日本」との発表もあった)。

 これは「東南アジアはビザが免除されたことで行きやすくなったが、日本は円安で財布に優しい。急速な円安が進んだので日本へ行くことにした」ということだろう(中国人観光客の訪日ビザ申請に必要な資産証明や戸籍で要件が緩和されたことも一因)。

 筆者はGWの連休前半に東京・銀座にオープンした「くら寿司のグローバル旗艦店」に行き、その後、観光客であふれる銀座の街を散策してきた。

 体感としては2割が中国人観光客でそれほど多いわけではなく、数年前のように大型の観光バスから次々と中国人観光客が降りてくる風景もなかった。

 だが、皆、何かしらのブランド品の袋を持っている点が印象に残った。
松屋銀座にあるルイ・ヴィトンの店舗前には長蛇の列ができていたが、ほとんどが中国人観光客。中国の口コミアプリ「小紅書(RED)」の「日本旅行のお土産はルイ・ヴィトンのバッグ」とのコメントにも多くの賛同が集まっていた。

 その後、筆者が銀座6丁目にあるユニクロ銀座店で中国人観光客3人に声をかけた。すると、皆が口をそろえて「日本は今、本当にお買い得」と言っていた。小紅書でも「オニツカタイガーで自分や家族のために10足の靴を買った」という口コミが話題となるなど、このGWは中国人観光客による爆買いに復活の兆しが見られたといえるだろう(2015年ごろは炊飯器などがよく売れたが、今はブランド品や「Made in Japan」の商品が買われるようになっている点はこれまでとの違い)。

 日本政府観光局が発表したデータによると、2023年の訪日外国人旅行者数は中国からは242万5000人と3番目(一番多かったのが韓国の695万8500人、2番目が台湾の420万2400人)。だが、1人当たりの平均旅行支出額では中国人観光客が31万9924円と一番高くなっている。

 円安が続く限り、中国人観光客による旅行支出額は増えていくはずで、近い将来、爆買いの完全復活は間違いないだろう。