
組織やチームを率いるリーダーには「勇気」が必要だ。それを磨くには、まず自分自身の「臆病さや不安(ヴァルネラビリティ)」を受け入れることが必要だという。本稿では『dare to lead リーダーに必要な勇気を磨く』(ブレネー・ブラウン著/片桐恵理子訳/サンマーク出版)から内容の一部を抜粋・再編集。勇気と不安の関係や、不安への向き合い方、リーダーシップのあるべき姿について解説する。
職場でいいことがあっても、なぜ上司は素直に喜べないのか? リーダーの用心深さによって失われてしまう大切な機会とは?
武装したリーダーシップ―― 物足りなさを埋めるために働き、喜びや認めてもらう機会を無駄にする

人前で話すとき、私はきまって聴衆にこう尋ねる。「人生ですばらしいことが起きても、すぐに“浮かれすぎるな、きっと悪いことが起きるぞ”と言い聞かせる人はどのくらいいますか」と。
あちこちで手があがる。「昇進した」「わくわくしている」「婚約した」「妊娠がわかった」「孫ができる」――何かいいことが起きると、私たちはつかのま、その喜びに浸る。だが5秒後には興奮は消え去り、その喜びを相殺するような悪いことが起こるのではとパニックになる。すぐにでもよくないことが起こるのでは?
もしあなたに子どもがいる場合、その寝顔を見ながら、信じられないほどの愛しさがこみあげると同時に「この子に何かあったらどうしよう」という恐怖に襲われたことがある人はどのくらいいるだろうか。統計的には、約90パーセントの親がそう考えている。
なぜ私たちは、無上の喜びに浸りながら、悲劇のリハーサルをしたがるのだろう?
それは、「喜び」が脆く傷つきやすい感情だからだ。恐怖と恥を研究する私からすると、そこには何らかのメッセージがあるように思う。