オリンパス 執行役 チーフマニュファクチャリングアンドサプライオフィサー(CMSO)小林哲男氏(撮影:川口絋)

 オリンパスは2019年以降、医療分野に集中する大胆な事業改革を断行。かつて中核だったカメラ事業、さらに祖業である顕微鏡など科学事業を次々に売却した。世界シェア70%の消化器内視鏡を中心に、100以上の疾患に対応する医療機器をグローバルで販売する「メドテック企業」としてスタートを切った同社は今、さらなる成長に向けて「ものづくり変革」を進めている。その変革をリードする小林哲男(同社 執行役 チーフマニュファクチャリングアンドサプライオフィサー(CMSO))に、これまでの経緯と未来像を聞いた。

内視鏡世界1位の成功体験が、内向き体質と慢心を生んでいた

小林哲男/オリンパス株式会社 執行役 チーフマニュファクチャリングアンドサプライオフィサー(CMSO)

1983年オリンパス光学工業(当時)に入社。製造管理のスペシャリストとして、米国やシンガポールで国際経験を養う。帰国後は医療分野や事業改革の分野でマネジャーを歴任。2012年執行役員グループ経営統括本部長に就任。2021年チーフストラテジーオフィサー、2022年現職に就任。経営戦略をはじめ、グローバルな製造、調達、サプライチェーン機能を率いている。

――オリンパスがものづくりの変革に乗り出している理由は何ですか。

 小林哲男氏(以下・敬称略) 当社は2019年に創業100年を迎え、これを機に、グローバルメドテック企業への変革を宣言しました。この基本方針の下、社内で長い時間をかけて議論を重ね、事業ポートフォリオ再構築を決断しました。2021年にカメラ事業、そして2023年には当社の祖業である顕微鏡などの科学事業の事業譲渡を完了しています。その結果現在は、ほぼ全ての事業が医療関係になっています。

 ただ、医療分野に集中できるようになったことだけで、今後の成長が約束されるわけではありません。2020年当時、真のメドテックカンパニーになるための課題が、すでにいくつか顕在化していました。

 まず、これからのものづくりに対応するために、組織体制から抜本的に作り直す必要がありました。

 グローバルの売り上げ比率が約8割である当社の場合、海外各国、地域の医療規制に対応した製品開発が非常に大きな課題でした。規制が強化される大きな流れは世界共通ですが、細かい部分は各地で異なります。従来、個々の規制への対応は各地域の事業部門に任せていましたが、それでは非効率であり、すでに限界が来ていました。

画像:オリンパス
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 規制対応だけでなく、開発体制にも各地域の特徴が色濃く出ていました。例えば日本はマニュアル作業(手作業)を突き詰めていくことが得意ですが、欧州、特にドイツはインダストリー4.0の総本山であり、開発や製造にデジタルを取り込むことを得意としています。今後、開発効率を高めていくためには、各所に分散している知見を集約し、グローバルに水平展開していくことが求められています。地域別から、機能別の組織へと変革を行いました。

 同時に、デジタル化への対応も大きな課題です。多くの産業でデジタルが破壊的な変革をもたらしています。自動車業界ですら、これまでのものづくりのDNAを変えるほどの変革をしていかなければいけない状況です。この流れは、いずれ我々の業界にも来ると思いますので、今から準備をしておかなければいけません。

 もう1つは、社内文化の問題です。当社は内視鏡というニッチな分野で世界シェア7割を確保しており、それを支える独自の仕組みを持っています。その大きな成功体験から来る「おごり」が社内に根ざしていました。

 成功が考え方を内向きにし、「これまでの仕組み、仕事の仕方で何事も自分たちで解決してきたし、これからも解決できる」という意識が支配的でした。そのため、違う意見を誰かが言ったとしても、全体の中ではつぶされてしまう傾向がありました。この体質を改める必要があったのです。