オリンパスは2019年以降、医療分野に集中する大胆な事業改革を断行。かつて中核だったカメラ事業、さらに祖業である顕微鏡など科学事業を次々に売却した。世界シェア70%の消化器内視鏡を中心に、100以上の疾患に対応する医療機器をグローバルで販売する「メドテック企業」としてスタートを切った同社は今、さらなる成長に向けて「ものづくり変革」を進めている。その変革をリードする小林哲男(同社 執行役 チーフマニュファクチャリングアンドサプライオフィサー(CMSO))に、これまでの経緯と未来像を聞いた。
内視鏡世界1位の成功体験が、内向き体質と慢心を生んでいた
――オリンパスがものづくりの変革に乗り出している理由は何ですか。
小林哲男氏(以下・敬称略) 当社は2019年に創業100年を迎え、これを機に、グローバルメドテック企業への変革を宣言しました。この基本方針の下、社内で長い時間をかけて議論を重ね、事業ポートフォリオ再構築を決断しました。2021年にカメラ事業、そして2023年には当社の祖業である顕微鏡などの科学事業の事業譲渡を完了しています。その結果現在は、ほぼ全ての事業が医療関係になっています。
ただ、医療分野に集中できるようになったことだけで、今後の成長が約束されるわけではありません。2020年当時、真のメドテックカンパニーになるための課題が、すでにいくつか顕在化していました。
まず、これからのものづくりに対応するために、組織体制から抜本的に作り直す必要がありました。