
富士通の時田隆仁氏は、2019年の社長就任以来、システムインテグレーションからサービス提供モデルへのコア事業変革、ジョブ型人材マネジメントの導入、社内システムの刷新など、数々の改革を実行している。2024年度も、副社長5名の新執行体制の導入、全社ERPの稼働などのニュースが伝わる。5年間の取り組みで富士通はどこまで変わったのか。そして今後の課題は何なのか。同氏に聞いた。
5名の副社長による執行体制の狙い
――2024年4月から、時田社長の下にCFO、CTOと3名の事業担当を配置し、計5名の副社長による経営体制に移行しました。その狙いと、約1年が経ったところでの効果はいかがですか。
時田隆仁氏(以下・敬称略) 当社は2023年に発表した中期経営計画において、「事業ポートフォリオ変革」「モダナイゼーションの拡大」そして「海外ビジネスの収益性向上」という3つの目標を設定しました。これは2030年に向けた成長における「準備期間」と位置付けたもので、現在、その折り返しを過ぎたところです。
この目標を実現するために、経営体制を強化しました。まずCFO(磯部武司氏)は、CEOに次ぐ重要な役割であり、またテクノロジーを経営の中心に置く企業として、CTO(ヴィヴェク・マハジャン氏)の役割も重要です。この2名の副社長に加えて、当社の事業を3つの分野に分けて、それぞれを統括する役割の副社長を設定しました。
3人のうちの一人が、当社が2021年に発表した「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を統括する高橋美波です。ユーバンスは当社の成長ドライバーと位置付けている事業モデルです。従来の当社のビジネスの中心だった請負型のシステムインテグレーション(SI)モデルを変革する「事業ポートフォリオ変革」の象徴的なもので、昨年度は前年比で7%程度事業が拡大しサービスソリューション領域の売上収益の17%を占めました。今年度はそれをさらに3%伸ばし20%にすることを目標に掲げています。