KADOKAWA 取締役 代表執行役社長 CEOの夏野剛氏(撮影:榊水麗)

 出版点数を絞りヒットを狙う出版社が増える中、KADOKAWAは逆に“点数を増やす”戦略を取っている。2024年度は年間約6000点のIP(知的財産)を創出し、それらをメディアミックスで展開。中には10年以上にわたり収益を上げ続ける作品もある。なぜそれが可能なのか? そしてどのような狙いがあるのか? KADOKAWAの夏野剛社長に戦略の裏側を聞いた。

急成長市場を勝ち切るIP戦略

──KADOKAWAの特徴として、IPを大量に創出してヒット作を生み出すビジネスモデルが挙げられます。2024年度は年間約6000点のIPを生み出しており、今後も点数を増やしていく方針とのことですが、その狙いはどこにあるのでしょうか。

夏野剛氏(以下、敬称略) 出版業界は必ずしも成長産業とは言えません。そのため近年は、点数を絞ってヒット作を狙う出版社が増えていますが、当社はむしろIPの点数を増やす戦略を取ってきました。

 というのも、当社はアニメや映画、ゲーム、ニコニコのようなWebサービスなど、書籍以外のビジネスが多数あり、それぞれの分野で大手企業の一角を担っています。これにより、出版から生まれたIPを他分野に展開し、複合的に利益を生み出すメディアミックス(※)が可能になります。つまり、生み出したIPを収益化する手段が多く、点数を増やすことに大きな意味があるのです。

※出版から生まれた作品をアニメやゲームなどさまざまなメディアで展開し、複合的に利益を生み出すビジネスモデル。