全日本空輸 代表取締役社長の井上慎一氏(撮影:榊水麗)
人の移動が止まったコロナ禍の苦難を乗り越え、インバウンド需要の追い風も受けながら好調な業績が続く全日本空輸(以下ANA)。イベントリスクの耐性を上げ、国際線、国内線、貨物の3事業で今後どのような成長戦略を描いていくのか。井上慎一社長にじっくりと話を聞いた。
パンデミック下で自ら空港に行き利用者にヒアリング
──過去、米国同時多発テロ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、リーマンショックなど、航空業界はさまざまな苦難に直面してきましたが、2020年に始まったコロナ禍を経て、経営のイベントリスクの耐性やレジリエンスはどこまで引き上げられた実感がありますか。
井上慎一氏(以下敬称略) イベントリスクは定期的に起き、そのたびに自力で耐え、企業力も社員の意識も鍛えられました。ただ、コロナパンデミックは過去のどの試練をも超える、強烈な修羅場でした。
まず収束するまで3年と長かったことに加え、ステイホームなどお客さまの移動が大きく制限される事態は全く想定できませんでした。
当然、われわれの業績は悪化の一途でキャッシュも減る一方でした。打てる手はすべて打ち、社員にも痛みを伴う措置を受け入れてもらいながら何とか乗り切ったのですが、その過程で嵐が過ぎ去るのをただ待つのではなく、次のステップへのヒントをつかめたことは大きかったですね。
──次のステップへのヒントとは。






