1995年にウェブサイト「jal.co.jp」を立ち上げ、その後、四半世紀にわたりデジタルシフトに継続的に取り組んできた日本航空(JAL)。現在では自社サイトからの航空券販売率が70%を超えて80%になろうとしている。2017年には旅客基幹システムも全面刷新した。そして今、業務のさまざまな場面で新しいテクノロジーを活用したDXが着々と広がりつつある。同社はどんなスタンスでDXに取り組んでいるのだろうか。
4つのイノベーション組織で実用性を高める
同社のDX推進の中核的な組織が、2017年6月に発足したデジタルイノベーション本部である。「イノベーション推進部」と新規事業を開拓してきた「事業創造戦略部」が統合して誕生した。2021年4月には、航空券の予約・発券システムや客室乗務員・パイロットが使う業務システムなどを通じて全社横断でデジタル化を推進する「デジタル推進部」と新領域である「エアモビリティ創造部」を加えて4部体制となった。
安全・安心を最優先する同社では、IT部門も守りを重視する必要がある。そこで攻めのITであるDXは別人格で臨む道を選択した。デジタルイノベーション本部イノベーション推進部部長の斎藤勝氏は、「イノベーション推進部だけでは、先進のテクノロジーを使って何か新しいことをやろうというところまではいきますが、足元のシステムがついてこない恐れがあります。そこで、より実用性を高めるためにデジタル推進部を同じ本部の中に集約しました」と語る。
本部として目指すのは、デジタルの力を使って「全社員の物心両面の幸福を追求し、お客さまに最高のサービスを提供し、社会の進歩発展に貢献する」というJALの企業理念を実現すること。そのために社員向けのEmployee Experience(EX)と顧客向けのCustomer Experience(CX)の最大化とSDGsの達成を大きな柱と位置付けている。
「ミッションは大きく2つあります。人財とテクノロジーで地に足のついた役に立つイノベーションを起こすことと、新たな事業を創出することです。当社はこれまで主軸のエアライン事業で2つの空港拠点をつなぐことで価値を提供してきましたが、今後は新たな事業で世界中のヒト・モノ・コトの距離を縮め、豊かな社会を広げていきたいです」と斎藤氏。エアモビリティやラストワンマイル、MaaSなどに取り組むのも新たな事業を創出するためだ。