大和ハウス工業 代表取締役会長 CEOの芳井敬一氏(撮影:榊水麗)
戸建て・賃貸住宅からマンション、商業・事業施設、環境エネルギーまで幅広く事業を展開する大和ハウス工業。同社には100周年となる2055年に「売上高10兆円」達成という創業者(故・石橋信夫氏)が掲げた目標がある。なぜ「10兆円」にこだわるのか。5兆円を超えた現在の売上高から、目標達成に向けてどのようなロードマップや事業ポートフォリオを描いていくのか。代表取締役会長CEOの芳井敬一氏に話を聞いた。
定年選択制、初任給アップで社員のモチベーションを高める
──大和ハウスはハウスメーカー、ゼネコン、デベロッパーの3分野すべてをカバーしています。自社の強みや、まだ足りていないピースはどこにあると考えていますか。
芳井敬一氏(以下敬称略) 名誉顧問(大和ハウス工業中興の祖として知られる樋口武男元会長*注)は、「われわれは住まいに関する総合商社だ」と話していますが、現状のビジネスは商業施設や物流施設といった領域にまで広がり、データセンターなども手がけています。
*注:“樋”のしんにょうの点の数は一つ
商業施設事業(COTOE流山おおたかの森/写真提供:大和ハウス工業)
事業施設事業(DPL坂戸/写真提供:大和ハウス工業)
事業領域の拡大に伴って、私の前任社長(大野直竹氏)は「われわれは“住宅の心”を持ったゼネコンである」と言われました。住まいの分野はオールラウンドに展開しつつ、非住宅分野についても“住宅の心”、つまり消費者目線や消費者起点のマインドを持った会社であり続けることが大事だというわけです。樋口と大野が語ったこの言葉に、大和ハウスの強みや特徴が集約されていると言っていいでしょう。
戸建住宅事業(「xevoΣ Premium」/写真提供:大和ハウス工業)
賃貸住宅事業(ZEH-M対応賃貸住宅商品「TORISIA(トリシア)」)/写真提供:大和ハウス工業)
一方で、まだ足りていないピースは人財面です。樋口から「売り上げ10兆円を頼むぞ」と言われた際、私は「自分のトップ在任中にその数字はかなえられませんが、1つだけ約束します。先々、この経営陣なら必ず10兆円を達成してくれるというメンバーを育てます」と宣言しました。
──社員の処遇面では、65歳一律定年制から65歳または67歳の定年年齢も選択できるようになったほか、大卒新入社員の月額給与を一気に10万円上げたことでも話題になりました。






