マンション建設をはじめとする土地活用から、オフィスビル、工場、病院、ホテル、店舗などの建て替えに関する企画・施工など、独自の「提案型営業」を強みとする髙松建設。人材不足や物価高騰などさまざまな課題が山積する建設業界において、大手ゼネコンとは異なる手法で成長を目指す同社の戦略とはどのようなものか。髙松孝年社長に聞いた。
自社で対応できない案件をM&Aで補完
――2000年以降、持株会社の髙松コンストラクショングループは積極的なM&Aで業容を拡大してきました。
髙松孝年氏(以下、敬称略) そもそも当社グループのM&Aは戦略的なものというより、金融機関から経営不振に陥った同業者の救済を持ちかけられる形で始まりました。当時は大手ゼネコンもバブルの傷が残っていて収益を上げるのに苦労していた一方、規模は小さくとも財務が健全だったわれわれに白羽の矢が立ったというわけです。
グループシナジーの観点から、この10年間で2社を売却しましたが、現在、20社のグループ会社が連携するまでに至りました。
――自ら戦略的にM&Aを仕掛けた事例は?
髙松 最近ですと、不動産売買を手掛けるミブコーポレーションや、木造戸建て・集合住宅事業、土地活用事業を手掛けるタカマツビルド、関西のゼネコンである大昭工業などの例があります。
これら20~30億円規模のM&Aを8年間にわたり行ってきました。この3社に関しては、当社が戦略的に仕掛けました。
――どのあたりが戦略的に合致したのでしょうか。
髙松 売り上げを伸ばすためには施工管理者の数を増やさなければなりませんが、今は技術者の取り合いになっていて厳しい状況です。そのため、髙松建設としては建築規模が一定以上の案件に絞って受注する方針を取っていますが、小規模な案件を他社に取られてしまうのはもったいない。そうした案件に対応するため、関西では大昭工業、関東ではタカマツビルドが同じ役割を果たしています。
――今後M&Aを手掛ける上で注目しているテーマはありますか。
髙松 アベノミクス以降は特に不動産価格の上昇が著しいため、われわれがデベロッパーに卸した土地が、2年後に1.5倍から2倍の価格で売られるような状況になっています。
そこで、2023年度からは可能な範囲でデベロップメントも自分たちで手掛けるようにしています。その領域で当社に不足している販売ノウハウの補完が、M&Aのテーマの1つとなるでしょう。
ただし、川上から川下まで全て手掛けるのは、良いことばかりではありません。ゼネコンの良さは在庫を抱えず、資金の持ち出しも少なくて済むところですが、デベロッパーになると、土地を購入してから建物を造って売るまでに数年かかってしまうため、潤沢な資金が必要なだけでなくリスクも負う形になります。ですから、時流を見ながら体力に応じた範囲内で堅実にやっていくつもりです。