(写真提供)マクニカ

 半導体商社マクニカの躍進が目覚ましい。半導体とネットワーク分野の急成長によって、2020年3月期の5200億円から2023年3月期には1兆293億円へと売り上げが倍増、「売上高1兆円クラブ」入りを果たした。この成長の裏には、IT本部の改革があった。市場の変動に対応できるだけの、新たなデジタル基盤を築くための改革である。本連載では、このIT本部の改革に焦点を当て、躍進の秘密を詳細に追っていく。

 第1回では「次世代システム」導入よる業務改革の成果、第2回第3回では「稼ぐIT」の狙いとその鍵となるIT人材の育成法に迫った。 第4回となる今回は、マクニカが挑む新規事業とそれをバックアップする専門家集団「DXファクトリー」の構想を紹介する。

連載ラインアップ
■第1回 売上高が2年で倍増し1兆円突破、マクニカの躍進支えた「10年後も楽しく働く」ための次世代システム
■第2回 「成長」の次は「改革」へ投資、マクニカが目指す「稼ぐIT」とは?
■第3回 今のままではIT部門は不要に・・・CIOの危機感から生まれたマクニカの「アジャイル型組織改革・人財育成」
■第4回 「稼ぐIT」をどう実現? マクニカが挑む「6つの新規事業」と専門家集団「DXファクトリー」構想とは(本稿)
■第5回 安藤CIOが語る「2030年のマクニカ」(仮題)
■第6回 安藤CIOが語る「稼ぐCIO論」(仮題)


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全国各地で走る自動運転EVバス、「自動運転レベル4」のサービスへ

 運転手の減少によるタクシーや路線バス不足で悩む日本の各地で、マクニカの自動運転EVバスが活躍する日がやってくるかもしれない――。

 2024年3月、マクニカは沖縄県石垣市、西日本電信電話、東運輸とともに石垣市における自動運転による地域活性化に関する包括連携協定を締結した。これにより、4者は、石垣市における地域住民向けの持続的な地域交通手段の維持、観光客向けの二次交通手段の拡充など地域課題の解決に向けた取り組みを進めていく。マクニカの役割は「自動運転EV(電気自動車)バスと遠隔監視システムの提供、EVバスのエンジニアリングとサポート」だ。

 これらの取り組みは、すでに50以上の自治体へ提案中で、実証実験に終わらず、自律運用できるような事業化プランまでをサポート。また、特定条件下においてレベル4に対応した最新型車両である自動運転EVバス「EVO」の社会実装にも取り組んでいる。

「自動運転レベル4」の公道走行は、日本では2023年に解禁され、サービス事業者は特定の地域内での運行計画を立て、許可が出れば、自動運転車両で人や物を運ぶことができるようになった。数年後、無人タクシー、無人バスなどが走り出すサービスが始まるであろう。

「マクニカでは、これまでB2B向けの事業が中心でしたが、このモビリティ事業をはじめとしてB2G(Business to Government)やB2C(Business to Consumer)、一般利用者向けのサービスも考えています。マクニカが培った既存の技術やノウハウを、新しいビジネスモデルと掛け合わせることで、ユニークなサービスに変わる可能性があります」と安藤啓吾CIOは語る。