写真提供:日刊工業新聞/Joan Cros/NurPhoto/共同通信イメージズ

 大手メーカーなどが物流子会社を手離すケースが相次いでいる。これを「外部化」とすれば、逆に物流会社を組織再編したりグループに取り込んだりする動きである「内部化」も顕在化している。なぜ、このような相異なる動きが出てくるのか。

 物流会社を巡る今の動きについて、物流メディア「ロジビズ・オンライン」編集長、『月刊ロジスティクス・ビジネス』副編集長の藤原秀行氏に聞いた。

<連載ラインアップ>
第1回 NXホールディングス、国交省、ヤフー…「ロジビズ・オンライン」編集長が解説、物流業界を進化させる2024年問題対策

■第2回 「ロジビズ・オンライン」編集長が解説 日通NECロジスティクス、SBSHD…M&Aで進む物流の「外部化」「内部化」とは(本稿)

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――自社が持っていた物流子会社を売却する企業が相次いでいる一方で、物流会社を自社に取り込む動きがあるのはどうしてでしょうか。

【月刊ロジスティクス・ビジネス】

2001年に創刊したロジスティクス管理の専門誌。 一般経済紙よりも深く、物流業界紙よりも広い視野から、独自のビジネス情報を発信。

藤原秀行氏(以下敬称略) 企業にとっての物流子会社の役割は、自社の製品を滞りなく運びながら、物流コストを下げることでした。しかし、事業環境の変化が激しい近年は、物流子会社にも、災害時に遅滞なく輸送を続けるにはどうすればいいかとか、どういうところに拠点を設ければより効率的な輸送ができるかといった、専門的な知識やノウハウが必要になってきています。

 しかし、物流コストの低減だけ考えていると、そういう新たな役割には目が行きにくくなってしまいます。

 それでもビジネスにおける物流機能の高度化に伴い、企業には物流の課題にどう対応すべきかという判断が求められるようになっています。専門的な知識を持つ人材を自社で育てることには限界がありますし、そのために必要な投資もコストと認識されます。

 だったら、自分たちは本業に専念して、物流は外部の専門企業に任せた方が得策だと判断すれば、物流子会社を手離すことになるでしょう。

 一方で、外部の物流会社の中に高度な知識やノウハウを持ち、優秀な人材もそろっていて、ドライバーやトラックもしっかり確保している会社があれば、買収して傘下に入れることで自社の物流機能を強化できると判断する会社も出てくるでしょう。ただ、現状では、内部化より外部化する企業の方が多いようです。

――今は物流子会社に対して、コスト削減だけではなく、親会社の売上にも貢献してほしいという要求が出てきているようです。

藤原 親会社の荷物以外に他社の物流も請け負うことを外販と言います。自社が持つ物流子会社のレベルが高く、顧客からの支持も厚いと、外販を増やし、売上を伸ばそうと考える企業もあります。

 2005年にニチレイから分社したニチレイロジグループ本社は日本有数の低温物流拠点網を備えている企業で、グループ従業員数は4500人を超え、売上高(連結)も2400億円を超えています。ニチレイの100%出資会社ですが、ニチレイグループ以外の仕事も積極的に取り、海外展開もしています。親会社の売上への貢献も相当なものがあるはずです。