JALカード 代表取締役社長の西畑智博氏(撮影:川口絋)

 2011年からJALが7年の歳月をかけて行った「SAKURAプロジェクト」は、50年ぶりに旅客基幹システムを刷新した前例のない挑戦だった。このプロジェクトを率いたのが、現在JALカードの代表取締役社長を務める西畑智博氏だ。西畑氏は、社内外でSAKURAプロジェクトのマーケティング活動を行うことによって膨大な数の関係者を巻き込み、成功に導いたという。現在もデータドリブン経営を軸にJALグループのDXに挑む西畑氏に、変革を実現するための秘訣を聞いた。

成功の要因は「的確な右腕・左腕の配置」

──2011年に始まった「SAKURAプロジェクト」とは、どのような取り組みだったのでしょうか。

西畑智博氏(以下敬称略) JALグループの国内線、国際線の予約から発券、搭乗までを担う旅客基幹システムを刷新する大規模なプロジェクトでした。

 旧システムは1967年に稼働を開始しており、JALのサービスを進化させるためには新しいものに入れ替えなければならないという課題意識を持っていました。後年、経済産業省が提唱することになる、いわゆる「2025年の崖」に直面するリスクも孕んでいたのです。

 プロジェクトに関連する周辺システムの数は70、提携企業は150社、移行データは1300万件、総投資額は800億円と、JAL史上最大規模となりました。私はプロジェクト途中の2014年から責任者を務め、2017年には無事に計画を完遂させることができました。移行に伴うシステム停止期間は夜間の数時間だけ。航空機の運航を止めずに新システムへの移行に成功した時は、心の底から安堵(あんど)しました。

 このプロジェクトは「IT Japan Award」(日経BP社)でグランプリを受賞するなど高い評価を得ました。しかし、それ以上に嬉しかったのは、最後までやり遂げた経験が社員の自信と実行力を育み、JALグループ全体の成長につながったことだと感じています。

──前例のない大規模なプロジェクトを、どのように進めていったのでしょうか。