写真提供:山陽新聞/共同通信イメージズ

 企業経営において、自社ビジネスの方向性が世界の潮流と一致していることは、価値創出に欠かせない前提と言える。とりわけ経営者は、こうした潮目を読む「感度」を貪欲に上げていく必要がある。本連載では『BCGが読む経営の論点2025』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。世界有数の戦略系コンサルティングファーム「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」のコンサルタントが提示する、2025年に重要となる10のマネジメント上の論点のうち「自動車」「物流」「アクティビスト」の3つのキーワードを軸に考察していく。

 第3回は、昨今の2024年問題にも象徴される「物流」(Chapter6:北川寛樹・豊島一清著)について考える。クラウドやAIなど、高度化する物流テクノロジーだけでは問題を解決し得ない、日本の物流業界が抱える特殊事情とは何なのか。

物流問題は地方と都市部で異なる

BCGが読む経営の論点2025』(日経BP)

 物流の課題は2024年問題の指摘以前から存在していた。物流コストの上昇をどう抑えるか、顧客対応をより早く行うために物流のキャパシティをどう確保するのか――。

 こうした課題には、あくまでも物流は正常に機能するという前提があり、顧客視点、荷主視点、大企業視点で議論がなされてきた。行き着く解決策は“末端企業へのしわ寄せ”であった。要は現場の人間の働きに頼ってきたのであるが、その人手自体が絶対的に不足しているというのが、現在指摘されている問題である。これはもはや、物流業界を根本的に進化させなければ解決しえない。

 少子高齢化による労働人口の減少は日本全体の課題だが、物流業界は99%が中小企業で構成されていることと、後述する理由により特に深刻な状態となっている。そのうえで、2024年4月には物流の貴重な担い手であるトラックドライバーの時間外労働に年960時間という上限が設けられた。これにより、2030年には日本の物流の需給ギャップは34.1%に達するという試算もある。

 問題の影響は、まず地方で顕在化する。

 地方では、労働人口と消費人口の減少が同時に進行している。この変化は物流費を押し上げる。早晩、現在は沖縄宛てなどに設定されている「離島料金」のような「地方料金」が設けられる可能性が高い。これを負担するのは消費者だ。