アクティビストの米エリオット・マネジメントは、ソフトバンクグループ株を大量取得し、自社株買いを要求したと英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
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 企業経営において、自社ビジネスの方向性が世界の潮流と一致していることは、価値創出に欠かせない前提と言える。とりわけ経営者は、こうした潮目を読む「感度」を貪欲に上げていく必要がある。本連載では『BCGが読む経営の論点2025』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。世界有数の戦略系コンサルティングファーム「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」のコンサルタントが提示する、2025年に重要となる10のマネジメント上の論点のうち「自動車」「物流」「アクティビスト」の3つのキーワードを軸に考察していく。

 前回に続き、今回も「アクティビスト」(Chapter10:加来一郎・辻垣元著)をテーマとして取り上げる。ガバナンスやTSR(株主総利回り)など、アクティビストが注目する視点を借り、企業価値を高めるためのポイントについて解説する。

アクティビストの提案から投資家の考え方を学ぶ

BCGが読む経営の論点2025』(日経BP)

 アクティビストのターゲットとなることは、経営者や従業員にとって不本意かもしれないが、そもそも売上成長、利益率改善、マルチプル(株価倍率。投資家が現在の業績と将来の成長ポテンシャルの両方をどのように見ているかを表す)向上など、何らかの改善の余地がなければ、投資家のレーダーにひっかからない。

 むしろ、自社に成長のチャンスがある証しとして前向きにとらえて、現状の経営状況を見直してみることが大切だ。実際にアクティビストの提案を受けて改善に取り組んだことで、結果的に中長期で成長を実現し、企業価値を向上させた企業も存在する。

 アクティビストが企業に提案する際には、時間とコストをかけて、企業価値を向上させるあらゆるレバーを徹底的に調べ上げていく。結果指標を見るだけではなく、変数を分解し、解像度高く事業モデルを評価するので、欠けている情報や戦略がうまくつながっていない箇所を見抜くことができる。

 競合他社との違いも詳細かつ具体的に調査し、その違いを理解したうえで、さらに何をすべきか、その行為でどのくらいリターンが見込めるのかを推定する。分析結果は大部のレポートにまとめ上げ、議論すべき内容を吟味してから、経営陣との対話に臨む。ゆえに単純な株主還元を超えるレベルの提案が可能になるのだ。

 裏を返すと、アクティビストが提案をしてくる前に、同じように現状を分析し先回りして手を打つことができれば、企業価値が向上するだけでなく、強硬的なファンドにつけいる隙を与えずにすむということだ。アクティビストの視点を参考にして、先んじて動くことが有効な防衛策になる。

 では、具体的にどのようなことをすればよいのか。アクティビストの提案、つまり、企業が企業価値向上に向けて検討すべきポイントをレベル別に整理してみたい。