SAPジャパン コーポレート・トランスフォーメーション ディレクターの村田聡一郎氏(撮影:榊水麗)

 2000年以降、欧米では多くの国が着実に経済成長した一方で、日本は「失われた25年」を経験した。その背景には何があったのか。SAPジャパン カスタマー・アドバイザリー統括本部コーポレート・トランスフォーメーション ディレクターの村田聡一郎氏は著書『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのかー日本型BPR2.0』(プレジデント社)で、その一つの大きな要因として、デジタルによるホワイトカラー業務の生産性革命が起きた欧米と、それが起きなかった日本という“差”があったと指摘する。同氏に、日本のホワイトカラーの生産性が向上しなかった理由やその背景にある課題について聞いた。(前編/全2回)

■【前編】部分最適の罠にはまった日本、デジタル化の波に乗れず「失われた25年」に沈んだのはなぜか(今回)
■【後編】21世紀は「定型業務を担わせない」ことが企業競争力に、その変革を推進する「仕組み」をどう作るか?(2024年10月30日(水)AM6:00公開予定)

“日本の失われた25年”の間に、経済成長を続けた欧米企業

──2000年頃から現在に至るまで、日本企業の経済成長が停滞する一方で、欧米企業は着実に成長を続けてきました。その背景には、欧米で起きた「デジタルによるホワイトカラー業務の生産性革命」があると著書で指摘されています。これはどのような意味なのでしょうか。

村田聡一郎氏(以下敬称略) 2000年頃から業務のデジタル化が進み、ホワイトカラー業務は「個人」「部門」「全社」という3つの段階で大きな変化を遂げました。

 まず「個人」レベルでは、これまで“紙と鉛筆”で行っていた業務がエクセルなどのソフトウエアで行えるようになりました。次に「部門」レベルでは、各部門で部門システムが導入され、それぞれの業務プロセスの効率化が進みました。

 その後、欧米企業では、部門システムに代えて、全社を統合管理するERP(Enterprise Resource Planning、基幹系情報システム)を導入し、全社レベルでの全体最適化を進めてきました。

 これにより欧米企業は、ホワイトカラーが従来行っていた定型業務をデジタルに置き換え、代わりに新規事業の創造、新製品の開発、顧客への高度な対応といった付加価値の高い非定型業務に専念させることを徹底してきたのです。その結果、ホワイトカラーの生産性が上がり、経済成長につながったと考えています。

 一方、日本企業でも個人レベル、部門レベルのデジタル化は進みましたが、3段階目となる全社レベルでの全体最適への移行がなかなか進みませんでした。