富士通 CEO 代表取締役社長の時田隆仁氏(撮影:宮崎訓幸)

 長年にわたり企業のIT開発や運用を担ってきた富士通が、事業構造の抜本的な変革を進めている。請負型開発モデルからサービスモデルへの転換、自社ITのクラウド移行、ジョブ型人事制度への転換など、いくつもの改革を同時に進める理由は何か。時田隆仁社長に聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年1月30日)※内容は掲載当時のもの

社員の行動変容は確実に起きた

――社長に就任されて2つ目の中期経営計画期間に入っています。前事業年度は経営改革を進めながら過去最高益を記録していますが、前中計3年間の利益率目標は未達に終わりました。それらをどう評価していますか。

時田 隆仁/富士通 CEO 代表取締役社長

東京工業大学卒業後、1988年富士通入社。一貫してシステムインテグレーション部門に所属し、金融機関向けシステムの開発に従事。2014年金融システム事業本部長、2015年執行役員、2019年執行役員常務、同年代表取締役社長に就任。2021年CEOを兼任。

時田隆仁氏(以下敬称略) 前中計では多くの取り組みテーマを掲げ、それぞれについて数値目標を設定しました。決して簡単に達成できる数字ではなく、若干市場コンセンサスよりも高いというご意見は多くいただいてもいましたが、自信がなかったわけでもありません。しっかりと計画したことができれば届くだろうという見込みを持っていました。

 その間、全社DXプロジェクト(通称「フジトラ」)を進めたり、人事制度をジョブ型人材マネジメントに変えたり、インターナルのコミュニケーション基盤を整備し、充足度を測ったりもしました。また事業としては、2021年の後半に「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」という新しい事業モデルを発表し、その後、富士通の成長ドライバーに位置づけました。

 さらに、生産性を上げるための努力として、15あった日本のSIer(システムインテグレーター)子会社を本体に吸収し、それを母体にしてジャパン・グローバルゲートウェイという標準的な手法やプラットフォームをベースにした、いわゆるニアショアの開発センターを作りました。加えて、その名の通りそこをゲートウェイとして、インドをはじめとしたよりコストパフォーマンスの高い地域でのオフショア開発も進め、相応の成果を上げてきました。それらの施策の結果が、前中計最終年度の過去最高益につながったと自己評価しています。

 残念ながら3年間の結果はターゲットには届かず、市場の皆さんには多少混乱があったというのが私の受け止めです。あえて言えば、既に過去の話かもしれないですが、パンデミックの影響が当初の想定より長引いたり、ウクライナ戦争などの外的環境の影響は、当社の場合、半導体などのサーバー部品の枯渇として業績に影響しました。それらを完璧に乗り越えることはできませんでしたが、利益率10%にも手が届くところまではいったと。これと過去最高益に結びついた行動変容が実現できたことも含め、一定の成果だと思っています。