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 国際情勢の緊迫化、サプライチェーンの混乱、原材料費や人件費の高騰、サステナビリティへの関心の高まり――。調達を巡る環境が複雑化する中、日本企業の多くが調達機能の重要度を十分に認識せず、理解のギャップが拡大している。その溝を埋め、環境変化に適合した調達機能へとアップグレードすることは喫緊の課題と言っていい。本連載では、『BCG流 調達戦略 経営アジェンダとしての改革手法』(ボストン コンサルティング グループ 調達チーム編/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集し、調達機能のあるべき姿と機能向上に向けた取り組みを解説する。

 第5回は、CPO(Chief Procurement Officer:最高調達責任者)を設置することから始まる、調達業務の変革に向けたポイントを解説する。

「CPO」を置き経営アジェンダとしての重要性をアピール

 日本企業においては、そもそも経営陣としてのCPO(最高調達責任者)が置かれているケース自体がまれである。当然ながら、CPOが置かれていない限り社内においては調達が重要な経営アジェンダであるとは認識されない。まずはCPOを置くことから調達ガバナンスが始まる。

 CPOおよび調達部門の配置は、各社の事業体や歴史的背景、同部門が置かれた目的・ミッションによって色が出るところとなる。

 おおむねは、①調達部門が独立した組織として配置される、②調達部門が生産などのサプライチェーン組織の傘下に配置される、③調達部門が財務や総務などの本社間接部門の傘下に配置される、という3つに大別できる。

 まず、①のタイプは1つの理想的なスタイルではあるが、日本企業においては実は例が少ない。一見、部門として独立しているように見えても、管掌役員が生産などの役員を兼務しているなど、独立性が確保しきれていないケースが多い。本来は、既に経営アジェンダとして調達の重要度が高まっていることから、独立した一組織として立てられるのが1つの将来像といえる。

 ②のタイプは、特に製造業においては最も一般的なスタイルだ。まず原材料・部品といった生産財の供給や原価管理に力点が置かれた組織形態である。

 生産サイドとの一体性が強くコミュニケーションがとりやすい一方、生産財以外、例えば間接材などは守備範囲から外れることが多く、また生産側の“下請け”になりがちで格が上がりにくいというデメリットがある。加えて、生産側が事業ラインに沿って分かれているようなケースで、そのひもづきの調達部門も分散しかねないという組織上のリスクがある。