良い倉庫を建てれば収益が伸びていくという、従来の倉庫業のやり方では限界が来る。これからは新たな収益モデルを構築しなければならない――。140年近い歴史を持つ三菱倉庫が、ここに来て大きな経営改革に乗り出している。その実現のために、同社が着目したのは「人」だった。人材ポートフォリオの策定、企業内大学の設置、経営層と従業員の対話集会といった人事施策を次々と進めているのだ。なぜ人に着目し、これらの取り組みを行うのか。人事トップである三菱倉庫 代表取締役 常務執行役員の前川昌範氏に話を聞いた。(前編/全2回)
利益の源泉は、建物から“人”へと移っている
――なぜ三菱倉庫では、「人」に関する大掛かりな施策を進めているのでしょうか。
前川昌範氏(以下敬称略) 私たち倉庫業がこれから利益を拡大していくためには、人への投資が欠かせないからです。
かつての倉庫業をあえて端的に表すなら、「良い場所に良い倉庫を作ることが利益の源泉になる」という考え方でした。優れた立地に広い面積の倉庫を作れば、荷物の保管料や荷役(にやく)料(※)によって自然と利益が積み上がっていくということです。
(※)荷物の積み上げや積み下ろし、仕分けなどで発生する作業料
しかし、当然ながら良い土地は年々少なくなり、好条件の倉庫を建てるのは難しくなっています。当社は倉庫以外の不動産事業も行っていますが、これも状況は同じです。
今後さらに利益を拡大するためには、従来通りの業務を行うだけのビジネスでは難しいでしょう。近年はステークホルダーからも高い資本効率を求められています。安定志向の経営を行うのではなく、より大きな利益を求めていかなければなりません。
必要なのは、これまでにない事業を行う、あるいは従来の事業に付加価値を付けることです。そして、そのアイデアや工夫を生み出せるのは人です。つまりこれからの利益の源泉は人であり、新たなアイデアを出せる人を増やしていかなければなりません。