ニューヨーク市長選挙に勝利したゾーラン・マヌダニ氏(写真:UPI/アフロ)
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 11月4日に行われたニューヨーク市長選では、民主党の急進左派のゾーラン・マムダニが当選した。34歳の若さである。

 また、バージニア州とニュージャージー州の知事選でも民主党候補が勝っている。この3連敗はトランプ政権にとってもショックである。

イスラム教徒であり過去100年で最年少となる市長を誕生させたニューヨーク市長選

 ニューヨーク市長選の得票率は、マムダニが50%、民主党の予備選で敗れて無所属で立候補した前ニューヨーク州知事のアンドルー・クオモ(67歳)が42%、共和党のカーティス・スリワが7%であった。

 マムダニは父親が大学教授、母親が映画監督で、一家は彼が7歳のときにニューヨークに移住した。2020年に州下院選挙で初当選したが、1年前に市長選に出馬表明したときは無名の存在であった。

 民主社会主義者を自称するマムダニは、物価高に悩むニューヨークの有権者に、家賃値上げの凍結、市営バス無料化、保育無償化、高所得者への増税、格差の是正などを訴え、急速に支持を拡大していった。演説の才能に長けており、SNSを駆使し、10万人近い草の根のボランティアに支えられて、大きな旋風となっていった。

 マムダニは、初のイスラム教徒の、そして過去100年で最年少の市長である。

 マムダニ当選の背景には、物価高がある。不動産価格では、ワンベッドルームの月家賃が3350ドル(約51万円)と、東京の6倍の高さである。収入の半分が家賃という状況である。さらには、治安の悪化に市民は不満を募らせている。

 マムダニは、富裕層への課税強化を謳い、格差を是正するという。具体的には、法人税の最高税率を7.25%から11.5%に上げる、年収100万ドル以上を対象に個人所得税を2%引き上げる、最低賃金(時給)を2030年までに16.5ドルから30ドルにする、市営の食料品店を設立するなどである。

 これに対して、トランプ大統領は、マムダニを過激な共産主義者と呼び、対決姿勢を露わにし、連邦政府のニューヨークへの資金援助を打ち切ると言っている。

 ニューヨークの経済界は、クオモ支持に回ったが、功を奏しなかった。