米海軍横須賀基地を訪問し、原子力空母ジョージ・ワシントン艦内で演説するトランプ米大統領(右)と高市首相=10月28日(写真:共同通信社)
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 トランプ大統領は、アジアを歴訪し、日米、日韓首脳会談を終え、締めくくりに、習近平主席と米中首脳会談を行った。マスコミは、トランプの一挙手一投足を詳細に報じ、映画スターのような取り上げ方をした。高市首相との首脳会談も、その内容よりも、両者の立ち振る舞いに注目が集まり、盟友関係を築いたと拍手喝采である。

 しかし、トランプ政権が展開している政策は、世界にとって素晴らしいものではない。

高市、有頂天に

 首相に就任して、すぐに日米首脳会談という重荷を背負った高市の緊張は想像に難くない。

 しかし、トランプの方は、相手が女性初の日本の宰相、安倍晋三元首相の後継者、保守派ということで、最大限の好意的態度を見せた。そのため、今回の高市外交は、初陣としては「大成功」と評価されている。

 しかし、トランプをノーベル平和賞に推薦するとまで述べたのには、賛成できない。世界の様々な紛争に対して仲介の労をとっていることは確かだが、関税攻勢で世界を混乱の渦に巻き込んでいることをどう評価するのか。世界経済が悪化すれば、それが紛争や戦争の原因となるからである。

 メディア、とくにテレビは、両首脳のパフォーマンスに焦点を当てたが、日米間の最大の懸案事項である関税問題は、これまでの協議の結果を追認した。日本は80兆円の対米投資を約束したが、日米両政府は、4000億ドル(約60兆円)の事業規模の投資案件を決めた。エネルギー、AI、重要鉱物などの分野である。今後、日本からの投資が順調に進むかどうかが焦点であるが、トランプにすれば、アメリカ国民に成果を見せつけて、支持率を向上させることが目的である。

 アメリカ大統領は2期までなので、トランプにとっては、自分が去った後のことはどうでもよい。任期中に関税交渉の成果を食い尽くそうという魂胆である。