(英エコノミスト誌 2025年10月25日号)
2019年の大阪サミットで顔を合わせた当時、そして現在の米中トップ(同年6月29日、写真:ロイター/アフロ)
中国は米国の攻撃を跳ね返し、国際通商の規範を書き換えた。
米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席が韓国で会談することになっている。しかし、会談が実現するかどうかは直前まで定かでなかった。
それが世界で最も重要な二国間関係のショッキングな現状だ。
米中はもう何週間も互いを非難し合っている。米国はテクノロジー関連の輸出規制を強化し、関税率を引き上げると脅しをかけた。片や中国はレアアース(希土類)関連の制裁や制限を繰り出している。
両国は意思疎通も不十分だ。
ホワイトハウスは、度胸試しと我慢比べなら米国の方が上だと思っている。スコット・ベッセント財務長官は、中国は「弱い」と言ってはばからない。
だが、現実は異なる。
2期目のトランプ政権の画餅
貿易戦争を優位に進めているのは中国だ。この国は米国と同じくらい効果的に事態をエスカレートさせたり、報復したりすることを学んだ。
また自国の貿易ルールを域外に適用する実験もしており、世界経済の進む道を変えつつある。
トランプ氏が大統領に返り咲いた時、その対中国政策のうち防衛に関連した部分は不明瞭だった。台湾や米国の同盟国を中国の軍事的脅威から守る用意ができているのか、はっきりしなかった。
これについては今でも不安を覚えるほど不明確だ。
だが、中国との貿易に対する大統領のスタンスは明快だった。大統領1期目にかけ始めた圧力を強める。これは関税の追加とハイテク製品の貿易の管理強化、そして制裁の乱発を意味した。
トランプ政権の狙いは、中国の強大な製造業の足首をつかんで動けないようにし、金融・商業の両面で譲歩を引き出し、中国の技術開発を減速させることにあった。
チーム・トランプのなかには、グランド・バーゲン(大取引)を夢見る者もいた。
米国が中国の首に乗せた足を下ろすのと引き換えに中国が国家資本主義の改革を約束するという内容だ。
それから6カ月経った今、中国はむしろ米国よりも楽に息ができるようになっている。その理由は3つある。