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(英エコノミスト誌 2025年10月4日号)

チップの高性能化が急速なテンポで進んでいるため、データセンターの陳腐化スピードも必然的に上がる(Pixabayからの画像)

今回の投資ブームは1990年代の通信バブルにどの程度似ているのか。

 コンサルティング会社のマッキンゼーは今春、人工知能(AI)の製造に必要な半導体チップやデータセンター、エネルギーに対する設備投資について極端なほど強気に見える予想を打ち出した。

 今後5年間で全世界で合計5兆2000億ドルに達するというのだ。

 それから半年も経たないうちに、同社はこの予想値の上方修正を検討している。米国における各種の発表は、生成AIインフラへの投資が極度の興奮状態に達しつつあることを示唆している。

生成AI向けにコンピューティングパワー増強

 こうした支出はオープンAI、エヌビディア、オラクルといった企業が明らかにしたデータセンター関連の途方もない規模の取引によって一層目立つようになっている。

 その目的は、生成AIの供給に必要だと各社が考えているコンピューティングパワーの増強にある。

 だが、その需要――特に、収益をもたらす需要――はまだ、供給側の熱気に見合うものになっていない。

 消費者によるチャットボットの利用は増えているが、マッキンゼーのパートナー、パンカジ・サッチデーバ氏によれば、同社が調べた限り、企業のAIパイロット・プロジェクトの成功率は15%にも満たない。

 そのため需給に「しこり」が生じ、何年も残る恐れがあるという。

 このインフラ投資ブームがバブルの崩壊で終わるか否かを決める最も重要なポイントは、生成AI需要の強さかもしれない。

 だが、データセンター建設ブームに見られる3つの新たな側面も不確実性を高めている。

 需要地から遠く離れた立地、建設資金を供給する株式非公開企業の存在、そして一部の借り手の信用力に漂う不安だ。

 この3つの要素を目にして前回のインフラ投資の大失敗を思い出す懐疑派もいる。1990年代後半の通信ブームがそれだ。

 それでも、その他多くの人は不安を抑えて飛び込んでいく。