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(英エコノミスト誌 2025年9月13日号)

データセンターの建設に巨額の投資が続いている(ElchinatorによるPixabayからの画像)

本誌の試算では、潜在的なコストは危険水域に到達している。

 2022年の「Chat(チャット)GPT」の公開以来、米国株式市場の時価総額は21兆ドル増加している。

 この増加幅の55%はアマゾン・ドット・コム、ブロードコム、エヌビディアなどわずか10社に由来する。いずれも人工知能(AI)ブームに乗っており、同様な銘柄はほかにもある。

 オラクルもAI関連株として注目されて急騰し、共同創業者のラリー・エリソン氏は短時間ながら世界一の富豪になった。

 今年上半期の米国の国内総生産(GDP)の成長はすべてIT(情報技術)投資ブームのおかげだった。

 今年に入って西側諸国のベンチャーキャピタル(VC)が実行した投資の3分の1はAI関連企業向けだ。

 市場がこれほどまでに活気づいているのは、AIが経済を一変させると考える人が多いからだ。

 VC会社セコイア・キャピタルの投資家たちは先日、AIは「産業革命を上回るとは言わないまでも、それに並ぶくらい大きな」変化になると論じていた。

 また資産運用会社アトレイデス・マネジメントのギャビン・ベイカー氏は昨年配信したポッドキャストで、AIの権威はこの技術が自社のために生み出す「何十兆ドルとか何百兆ドルの企業価値」だけを追い求めているのではなく、『デジタルの神』なるものを創造するレースを闘っている」と述べた。

 そのように考えるのであれば、どんな金額の投資でも正当化される。

AI投資ブームは「根拠なき熱狂」か?

 AIは本当に「神」のようになるのだろうか。

 ひょっとしたら、なるかもしれないが、欧州の大手金融機関UBSが先日公開したリポートによれば、AIがこれまでにもたらした売上高は「失望を誘う水準」にとどまっている。

 本誌エコノミストの推計では、西側の大手AI企業で計上されるAIによる売上高の合計は、今のところ年500億ドルだ。

 この数字は急増しているものの、データセンターの新設に投じられる資金――モルガン・スタンレーの予測では2025年~28年の投資額(エネルギーコストを除く)は世界全体の累計で2兆9000億ドル――に比べればまだ微々たるものだ。

 AIによる売上高は急増を続ける可能性がある。だが、それはAI技術が役に立つと一般の企業が考え続ける場合に限られ、その通りになる保証はない。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が先日行った研究では、組織の95%が生成AIへの投資から得ている「リターンはゼロ」だと答えている。

 こんなことでは、AI投資が根拠なき熱狂になっていないかと疑問に思う人が増えても不思議はない。

 ヘッジファンドのプラエトリアン・キャピタルはドットコム・バブル時代に大陸を横断する光ファイバーケーブルを敷設しすぎた企業を引き合いに出し、「グローバル・クロッシングが蘇った」と指摘する。

 またUBSの別のリポートによれば、「この分野のバリュエーション(株価評価)には本当に赤信号が灯っている。キャッシュフローが市場予想を下回ったら、それを吸収できるゆとりはもう(株価には)ほとんど残っていない」。

 未公開株投資会社アポロ・グローバル・マネジメントのトルステン・スロック氏も、今日のAI関連株のバリュエーションは1999年のドットコム株のそれより割高だと主張している。

 オープンAIのトップで、AIの最も熱心な伝道者の一人であるサム・アルトマン氏でさえ警鐘を鳴らしている。

「我々は今、投資家が全体としてAIについて熱狂しすぎている段階に入っているのか。個人的には、その通りだと考えている」と語った。