(英エコノミスト誌 2025年10月18日号)
EVや風力発電などに不可欠の希土類磁石(9月19日、エストニアに完成したレアアースを使った磁石工場で、写真:新華社/アフロ)
米中が貿易をめぐって衝突するにつれ、それぞれの立場に亀裂が生じている。
リチウムイオン電池、それも電気自動車(EV)を走らせるような類いのリチウムイオン電池を作ることは、ケーキを焼くことに少し似ている。
まず、イオンを豊富に含んだ粉をダマのないバッター液に混ぜ、箔(ホイル)の上にムラなく広げる。広げた材料はオーブンのなかで乾燥させなければならない。
ちょうどケーキを焼く時に水分が失われるのと同じだ。乾燥させたら、慎重に積み重ねなければいけない。
電池の基礎である化学反応はかなり良く理解されている。だが、一流の電池メーカーは一流のケーキ職人と同様に、その技術をキッチンで何年もかけて磨いている。
再びエスカレートする貿易摩擦
この技術の達人の多くは今、中国に住んでいる。
中国商務省は10月9日、各種の部品や製造装置、電池材料などを輸出する電池メーカーは輸出許可の取得が近々必要になると発表した。
レアアース(希土類)に対する新たな規制も含む、中国の輸出規制の抜本的見直しの一環だ。
現政権は中国の貿易相手国を動揺させており、米国のドナルド・トランプ大統領にいたっては激怒している。
トランプ氏は今回の発表を受け、中国からの輸入品に100%の追加関税を課し、米国から中国への輸出についても報復的な規制をかけると脅している。
どちらの超大国もまだ、壊滅的な貿易危機を回避できると自信を持っているようだ。
中国は米国による関税発動の脅しを公然と非難したが、対抗措置は取っていない。
両国の政府高官は10月13日に顔を合わせ、10月15日の世界銀行と国際通貨基金(IMF)の会合にも出席した。
また10月29日、すなわち韓国で首脳会議が開かれる前にトランプ氏と習近平国家主席が会談し、取引に合意する可能性があるとも期待されている。
だが、休戦状態を維持するには、どちらの側も相手の――そして自らの――長所と短所を把握しなければならない。これはすぐには達成できそうにない。