中国は、自らがほぼ100%独占しているサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種類の輸出規制を、4月4日に始めたが、それが功を奏して、トランプ政権は、5月14日には、対中追加関税145%を115%も引き下げた。

 中国は、10月9日に、4月に規制した7種類に加えて、さらに5種類を追加するのみならず、レアアース磁石については、中国以外で生産されても、中国産レアアースを0.1%でも含んでいれば、規制の対象にした。レアアースを使って製造する強力な磁石こそが、最先端産業の要なのである。

周到な事前準備

 米中首脳会談を前に、10月25、26日、クアラルンプールで、アメリカと中国の閣僚級貿易協議が行われた。

 中国がレアアース規制を10月9日に強化したため、反発したトランプ大統領は、11月1日から中国製品に新たに100%の関税をかけると脅していた。しかし、この閣僚協議の結果、中国はレアアース規制を1年延期することにし、アメリカによる対中100%の追加関税も回避されることが決まった。

 トランプの関税攻勢に対して、中国はアメリカ産大豆の輸入を停止しており、これはアメリカの農民にとっては、死活問題である。そこで、今回、中国は、大豆など農産物の輸入再開を認めた。中国は、輸入元をブラジルなどに変更することによって問題を解決しており、不利になっているのはアメリカである。この点でも、中国外交のしたたかさが見て取れる。

 さらに、9月にアメリカが発表した先端半導体の対中輸出規制の対象拡大が、1年間停止された。

 また、11月まで停止するとしていた24%分の追加関税も、停止期限を1年間延長した。

 10月14日に開始した入港料の相互徴収も1年間停止することで合意した。

 台湾問題については、話題にならなかったという。

 トランプは、アメリカへ帰国する機内で、「10点満点で12点だ」と評価して、満足感を示した。来年4月には訪中するという。