今も旧ソ連地域はスターリンの呪いに苦しめられている(写真:AP/アフロ)
(安木 新一郎:函館大学教授)
2026年1月19日、東欧のモルドバは旧ソ連構成国からなるCIS(独立国家共同体)との3つの協定を破棄し、4年以内に脱退すると、ポプショイ・モルドバ外相は地元メディアを通じて公表した。モルドバのサンドゥ大統領は2020年代のEU(欧州連合)加盟を目指しており、すでに2023年以降はCISのあらゆる活動への参加を停止している。
モルドバはウクライナとルーマニアに挟まれた国で、ロシアは常にモルドバに内政干渉を続けてきた。
面積3.4万平方キロメートルで九州より小さく、人口は240万人しかいない。一人当たりGDPは5280ドルで欧州最貧国だ。小国とはいえ多民族国家で、人口の4分の3はルーマニア人だが、残りはウクライナ人、ロシア人、ガガウズ人などで、国内はロシアの干渉政策により分断されている。
1991年のソ連解体後、モルドバは独立国となったが、東部のトランスニストリア地域には、ロシアの支援する「沿ドニエストル共和国」が事実上独立状態にある。また、同国南部にはガガウズ自治区という、トルコ系ロシア正教徒であるガガウズ人の自治地域が存在している。つまり、小さなモルドバの中に、もっと小さなロシアが2つもあるのだ。
モルドバでは240万人中150万人がルーマニア市民権、すなわちEU市民権をもっている。もしモルドバがEUに加盟すると、ロシア人やガガウズ人といった多くのロシア正教徒がEUに含まれることになり、ロシア正教徒の保護を名目に、ロシア軍がEU域内にまで侵攻する口実を与えかねない。