成立したステーブルコイン規制法に署名するトランプ大統領(提供:Daniel Torok/White House/ZUMA Press/アフロ)
(安木 新一郎:函館大学教授)
米国では2025年9月30日までに、2026会計年度の当面の資金を確保するための暫定予算、いわゆる「つなぎ予算」案が議会を通過できなかった。その結果、10月1日から政府機関の一部閉鎖と連邦職員の一時帰休が始まり、さらに職員の一定数が解雇される恐れが出てきた。これを機に、トランプ政権は、肥大化した官僚組織を小さくしたいと考えているからだ。
米国では、連邦職員、つまり国家公務員が一時帰休になるということに慣れっこになっている。これは驚くべきことだろう。
今回、説明する1兆ドルプラチナ硬貨の発行は、ノーベル経済学賞受賞者が、繰り返される連邦機関の一時閉鎖と職員の一時帰休を恒久的に回避するために提案した。しかしながら、結果的にオバマ大統領(当時)には受け入れられなかった。もはや解決策はないことが13年前にわかってしまったのである。
1兆ドルプラチナ硬貨とは、2012年末から2013年初頭にかけて、米国内で発行の是非が議論され、結果的に発行されなかった超高額面の記念硬貨である。
歴史上、第一次世界大戦直後のドイツや、近年ではアフリカ南部のジンバブエのように、ハイパーインフレーションの結果、あるいは原因として超高額面の紙幣が印刷されることはしばしば見られる。
ハイパーインフレ状態ではない米国で、超高額面の硬貨発行が検討された背景には、現在まで続く、連邦予算をめぐる共和党と民主党とのあいだの対立、特に連邦債務上限引き上げ問題がある。