10月末に開催される日銀の政策決定会合は今後の試金石になる(写真:ロイター/アフロ)
目次

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

皮肉な結末になった総裁選

 10月4日に実施された自民党総裁選は決選投票において高市早苗氏が小泉進次郎氏を破り、初めて自民党に女性総裁が誕生する運びとなった。もちろん、首班指名で選ばれれば初の女性首相である。

 高市氏のリフレ思想に賭ける勢いは強く、東京時間6日朝から円売りは加速し、日経平均株価指数も前日比+4.5%以上(+2000円以上)の急騰を示している。

 近年、物価高対策に苦慮してきた自民党が最もリフレ思想の強そうな候補者を選出したことは皮肉だが、昨今の国政選挙では物価高対策として拡張財政(給付や減税など)という矛盾する政策が平然と持ち出され、しかもそれが支持されてきた経緯がある。

 達観すれば、民意を反映した指導者が選ばれたということなのかもしれない。後述するように高市氏がどれほどリフレ政策に傾倒するのか現時点では定かではないが、金融市場の初動が円売り・株買いであることは必然である。

 筆者は過去のコラム「金融市場は石破辞任に円安・株高の高市トレードで応じたが……、誰が首相になっても直面するインフレ下の3つの事実」で誰が次期首相になろうと、①少数与党であること、②労働供給制約があること、③②ゆえに財政・金融政策の緩和余地が小さいこと──という3つの論点は変わりようがないと強調した。この基本認識は今も変わっていない。

 目下、①がどう転ぶかが注目されている。少数与党ゆえ、野党からの拡張財政要求を飲まざるを得ないという状況は、誰が指導者になろうと回避することは難しいだろう。ただ、そもそも高市氏自身が拡張財政に前向きな政治家ゆえ、野党連携においてこの点は障害になりにくい。

 だからこそ、野放図な拡張財政路線への傾倒が懸念され、円金利上昇と円安が併存しているわけである。よって、「連立相手がどの政党になるのか」は政局上、重要論点になるとしても、金融市場においてはさほど重要ではないように思われる。

 その上で連立相手の最右翼は国民民主党との声が多い。昨今の国政選挙で耳目を引く外国人対策やスパイ防止法、そして憲法改正などで距離が近そうな野党は消去法でいけば国民民主党しか残らないとの見立てである。

 同時に、公明党が政権に残ることを前提とすれば、同党と折り合いの悪い日本維新の会との連立は難易度が高いという状況は、高市政権となったとしても大きく変わりそうにない。