9月19日、金融政策決定会合後に記者会見する日銀の植田総裁。日銀はETFを市場で売却していく方針を発表した(写真:共同通信社)
目次

日本銀行は、2025年9月19日の政策決定会合で、ETF(指数連動型上場投資信託)の売却を決定した。今後は、簿価37兆円、時価70兆円(2025年3月末現在)の日本株式がETFという器を介して売却されていくことになる。

(平山 賢一:麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

封印されていた議論の扉を開けた意義は大きい

 市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%程度で年間売却額はおおむね6200億円(時価ベース)に過ぎず、このペースでは100年以上を要する。また、市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整・停止を行うことができるため、市場の安定に配慮した内容になっていると言えよう。

 逆に売却ペースがゆっくりであるため、100年超にわたり売却せざるを得ないというデメリットもある。これほどまでに超長期にわたる売却では、株式の大暴落も度々経験するはず。そのたびに日本銀行は、神経を擦り減らして市場と対話し、臨機応変に対応せざるを得ないだろう。つまりETFの出口戦略は、その決定により一件落着したわけではなく、むしろ第一歩に過ぎないのである。

 ETFの購入が始まったころは、購入規模が数年程度で売却可能な範囲に抑えられていた。しかし、その仕組みを受け継いだ2013年以降の異次元緩和では、ETFの購入制約を緩め、100年以上もかけないと売却できないほどに巨額に買い込んでしまった。

 それだけではない。出口戦略を議論すること自体を「時期尚早である」として封印してきたのである。

 確かに政策発動と同時並行的に議論する必要はないものの、2021年3月の「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」以降、ETF購入がペースダウンしてからは、むしろ出口を議論する契機が整っていたはず。出口戦略の議論が長く先送りされたことは、結果として政策透明性を損なう側面があったと言えよう。