シベリアにある炭鉱。ウクライナ侵攻後、ロシア産石炭は買い叩かれている(写真:ロイター/アフロ)
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(安木 新一郎:函館大学教授)

 2025年6月、インドは初めて樺太(サハリン)産褐炭の輸入を開始し、イースト・マイニング社(EMCO)から5.5万トンの褐炭を購入した。

 イースト・マイニング社はサハリンの石炭採掘量の約8割を占める。露天掘りのソンツェフスク炭田からシャフチョルスクの石炭積み出し港を結ぶ23キロのコンベヤーを使って、年間1400万トンの石炭を輸出している。

 サハリンと言えば、LNG(液化天然ガス)や原油の産地として有名だが、石炭も豊富に産出する。日本は戦前から石炭開発を手がけており、日本の総合商社もイースト・マイニング社と提携してきた。

 米国は日本に対し、サハリンからのLNG供給停止を要望している。同様に、米国はインドに対しても、ロシア産原油の輸入停止を求めている。ロシアから見れば、日本やインドが資源を買ってくれなければ、中国への依存度がますます高まることになる。

 一方で、言うまでもなく、日本やインドにとってサハリンのエネルギー資源は重要な存在だ。

 もっとも、サハリン産のLNGや原油と異なり、石炭は輸入停止の議題には上がらない可能性が高い。サハリンには、プーチン大統領に忠実なオルガルヒで、トランプ大統領とも近い関係にある「石炭王」がいるからだ。