ロシアの原子力潜水艦(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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(安木 新一郎:函館大学教授)

 2月7日、衆院選挙中の高市早苗首相も出席して、令和8年北方領土返還要求全国大会が東京で開催された。しばらく領土交渉は進まないだろうが、せめて墓参だけでもできるようにしてほしい。50年、100年たっても領土は返ってこないかもしれないが、返還要求運動をつづけることに意味がある──。大会では、以上のような何とも元気の出ない議論に終始した。

 日本国内ではあきらめムードが顕著な北方領土問題だが、ロシアの方も千島列島(クリル諸島)の防衛にとても苦慮している。

 千島列島は、ロシアの原子力潜水艦の主要拠点であるカムチャツカ半島のペトロパブロフスク=カムチャツキーとウラジオストクを結ぶ原潜の通り道。この千島列島を失うことは、日本海から北西太平洋を経て北極海に至る長大なシーレーンを奪われることを意味する。千島列島のどこをなくしても、「原子力潜水艦の巣」であるオホーツク海への侵入を許してしまう。

 空母や空母打撃群のないロシアにとって、頼りの綱は核ミサイルを搭載する原子力潜水艦。これを地上から守るために策定されたのが、いわゆる「バスチオン」戦略である。

 もっとも、日米海軍が千島列島に近づいても、バスチオンを中心とする地対艦ミサイルによる防衛システムは動いているように見えない。もちろん隠密の軍事行動をとっている可能性はあるが、少なくとも2024年8月からバスチオン大隊による演習は行われていない。事態を詳しく見てみよう。