バスチオン戦略は本当に機能しているのか?
ロシア軍はバスチオン戦略に基づき、千島列島の北・中・南にミサイルを配備している。
まず、2016年に択捉島にバスチオン、国後島にバルといった地対艦ミサイルが配備された。次に2021年、中千島の松輪(マトゥア)島に、最後に2022年、北千島の幌筵(パラムシル)島にバスチオン大隊が配置された。つまり、バスチオン戦略は2022年のウクライナ戦争以前から計画・実施されていたもので、ウクライナ戦争とは関係がない。
ウクライナ戦争はプーチン大統領の当初の目論見とは異なり、キエフを簡単に落とすことができず、長期化している。プーチン大統領はロシア軍に対し、極東からウクライナへの移動を命じており、わずか兵力4000の北方領土からもかなりの兵力が割かれたと考えられる。
こうした状況の中、ついに日本が動き出した。2023年8月21日から28日まで、海上自衛隊、米海軍、カナダ海軍による共同訓練「ノーブル・チヌーク」を、千島列島東方沖から関東南方で実施したのである。
「ノーブル・チヌーク」は日本の「ヘリ空母」ひゅうがを中心としており、米艦載機がひゅうがを利用するという訓練だ。なお、ひゅうがはヘリコプター、オスプレイ、F35Bなどが離着艦可能で、米海軍はホームページにて空母と明記している。
日米加による千島列島への攻撃、上陸を想定したと見られる訓練に対し、ロシア軍の対応は遅いものだった。ロシア国営タス通信によると、2024年8月1日から松輪島でバスチオンを扱うミサイル大隊などによる戦術演習を開始、50人強が参加したと発表した。「ノーブル・チヌーク」から1年経過してからのバスチオン大隊による演習だったことになる。
このように、核ミサイル搭載可能なフリゲートや原子力潜水艦が配備されているものの、攻撃してくる敵艦を地上からミサイルで打つバスチオンが運用できていないのではないか、ウクライナに兵力が移動しすぎているのではないか──。そう疑われてもおかしくない状況が北の海で展開されているが、ロシア軍は千島列島をまともに防衛できていないという疑問をさらに裏付ける行動が2025年に見られた。