衆院選での開票作業(写真と本文は直接関係ありません)=2026年2月8日(写真:新華社/共同通信イメージズ)
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(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

東京・大田区「白票水増し事件」の重大さ

 自由民主主義の国家において、選挙は主権者である国民が政治に参加し、自らの意思を国政や地方の政治に反映させるための重要な手続きと見做されていることは論を俟たない。

 選挙の結果は、有権者の投じた一票一票によって正確に決定されるという前提が、選出された代表者の正統性を支え、権力行使に正当性を付与していると考えられる。

 したがって、選挙制度そのものに対する国民の信頼は、民主主義社会が機能するための基盤であり、根幹といえる。

 手続き的公正性の観点からも、選挙の過程が公正に管理されているという認識と信頼が、結果の受容性を高めることにもつながっているはずだ。

 日本における選挙管理や選挙ガバナンスの仕組みは、概ね厳格に運用されており、その信頼性と正確さは世界的にも高い水準にあると評価されてきた傾向がある。日本の選挙事務は高度な正確性と政治的中立性を備え、諸外国と比較しても堅牢なシステムを構築していると現に認識されている。

 しかしながら、その前提を揺るがしかねない、憂慮すべき事態が露見した。それが、東京都大田区の選挙管理委員会において発覚した、票の水増し操作と不正「発覚」後の隠蔽、それらに伴う公職選挙法違反事件である。

大田区選管の無効票水増し処理、10年前から続いていた疑い…不正処理のノウハウを職員間で引き継ぎ : 読売新聞オンライン  

大田区職員4人を書類送検 参院選で白票操作容疑―都知事選でも・警視庁:時事ドットコム

 報道や事件の経緯によれば、問題の舞台となったのは、2024年東京都知事選、2022年の参議院選をはじめとする複数の選挙における大田区選挙管理委員会の開票作業である。

 同選挙管理委員会の事務を担当していた職員らが、集計上の投票者数と、実際に投票箱から回収された投票総数との間に生じた不一致を隠すため、架空の白票を計上し、数を合わせるという不正操作を行っていたという疑惑だ。

 具体的には、受付で記録された投票者数に対して実際の票が不足していたため、白票や持ち帰り票があったかのように装い、数百票から数千票規模の水増し、すなわち白票の二重計上などを行った疑いが持たれている。

 結果として、この隠蔽工作に関与した職員らが、公職選挙法違反の容疑で書類送検される事態へと発展している。