偽情報・陰謀論がはびこるこの時代に求められる透明性

 民主主義の根幹である選挙制度に対する国民の信頼がひとたび失われれば、それを回復することは容易ではない。

 特定の政治勢力による陰謀論や、選挙の正当性を攻撃する偽情報がインターネット等を通じて拡散しやすい現代社会において、選挙の公正性を担保する手続きの透明性は客観的に確保されることが望ましい。

 また、今回の事件に関して、主要な新聞などの伝統的メディアでは相応の面積を割いて報じられている一方で、インターネット上や政治に関心の高い層が集まるコミュニティにおいてさえ、十分に話題となっていないようだ。

 これは、選挙実務という地味な領域に対する社会的な関心の薄さを示すものかもしれないが、手続きの公正さが損なわれることは結果の正当性を損なうことに直結するため、より多くの人々が問題意識を共有することが求められる。

 したがって、大田区の事件を単なる一過性の不祥事として終わらせることなく(全国で同種案件が頻発しているからこそ!)、これを契機として再発防止策を講じるとともに、全国の選挙管理委員会における業務実態の精査と点検を進めるべきだ。

 業務マニュアルの再確認や、過去に遡ってのヒアリング調査なども併せて行うことが有効と考えられる。 第二に、属人的な業務環境からの脱却と、内部監視体制の強化である。一つの集計業務を特定の職員一人に任せきりにするような人員配置を見直し、原則として複数の職員によるクロスチェックが機能する体制を構築することが望ましい。

 また、中期的には開票所における立会人の役割を現状のいささか形式的なものにとどめず、より実質的な監視権限を付与するための運用見直しも検討課題となるだろう。

 第三に、実効性のある外部監査システムの導入である。現状の選挙管理委員会は、地方自治体の行政機構からある程度独立した行政委員会としての建前をとっているものの、実際にはその事務局を構成するのは当該自治体からの職員であり、行政組織からの独立性が十分に担保されていない側面がある。また、少人数になりがちで、同僚や上司に対する忖度が生じやすい閉鎖的な環境にある。

 定期的あるいは抜き打ちで、地方自治体とは利害関係の少ない第三者が、開票業務のプロセスや組織のガバナンス体制を客観的に評価し、精査、改善の提言を行う仕組みがあってもよいのではないか。

 大田区の事件は、日本の選挙制度、選挙ガバナンスが抱える宿痾の一端を改めて明るみに出した。事態の深刻さを社会全体で共有し、制度を支える具体的な監視強化と仕組みの改善を通じて、政治不信を寄せ付けない確固たる選挙制度の信頼を維持、再構築することが求められる。