夷を以て夷を制するスターリンの呪い

 旧ソ連地域はスターリンのかけた呪いに苦しんでいる。スターリンはソ連国内で大虐殺や強制移住をおこない、ドイツとの無理な戦いで数千万の命を奪った。また、少数民族の言語や文化を消し去ろうとした上に、第二次世界大戦の領土不拡大方針を無視し、日本、ドイツ、ルーマニア、スロバキアなどから領土を奪った。

 ルーマニア人はソ連によってルーマニアとモルドバという2つの国に分割されてしまった。人口が激減したモルドバにロシア人やウクライナ人が移住し、モルドバの人口の4分の1はルーマニア人ではなくなった。

 一方、ガガウズ人はトルコ語を話していたにもかかわらず、ソ連時代、ロシア語教育と使用が強制され、独自の文化が否定された。ルーマニア人もガガウズ人もスターリン、そしてソ連統治の被害者である。

 にもかかわらず、ロシアはガガウズ人を利用してモルドバ政府を圧迫している。ガガウズ人に対し、モルドバとルーマニアが合邦したら、ガガウズ人の権利が奪われると煽っているのだ。

 スターリンの夷を以て夷を制する、異民族を牽制するために他の異民族を利用する政策を、プーチン大統領も十分に活用してきた。

 コーカサスのジョージアでは、アブハズ人とオセット人をロシア側に寝返らせ、それぞれアブハジア共和国と南オセチア共和国を作り、ロシア軍を駐留させている。

 アゼルバイジャンでは、アルメニア人とレズギン人を支援し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領が欧米に傾くのを阻止しようとしてきた。

 ところが、アゼルバイジャンはトルコやイスラエル製の装備を得て、ついにアルメニア軍が占領していたナゴルノカラバフ地域を奪い返した。また、アルメニアもロシアの支援がなかったとして欧米側につきつつある。ロシアによるアゼルバイジャンとアルメニアの離間策は上手くいかなくなっている。