党首討論会で発言する高市首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 高市早苗総理が1月23日、衆議院を解散した。解散の争点として食品類向けの消費税の2年間撤廃を検討すると掲げたことや、行き過ぎた緊縮志向の流れを終わらせると発言したことが金融市場で嫌気され、国債相場では超長期債を中心に売りが殺到、40年債利回りは一時4%を超えた。金融市場では“高市ショック”の声が聞かれる。

 この高市ショックの厄介な点は、それが短期で収束することが見込めないことにある。引き合いに出されるトラスショック、すなわち英国のリズ・トラス元首相が代替財源のない減税計画を掲げたことで英国の金融市場が混乱し、早期での辞任を余儀なくされたことに比べると、今般の高市ショックは金融市場の混乱が漫然と続く恐れがある。

 金融市場の混乱を鎮める一番の妙薬は、特に投機筋が材料視する減税検討の公約を撤回することだ。しかし、2月8日の投開票まで、おおよそ2週間の選挙戦に突入したことで、これが実現しにくくなった。解散の大義を自らへの信託と位置付けた高市総理にとって、食品向けの消費税の2年間撤廃の検討という旗を降ろすことなど容易ではない。

 言い換えると、投機筋にとっては、選挙期間中は日本国債に売りを浴びせる格好のチャンスになる。そのとき、頼みの綱は日銀しかない。金利が暴れた場合、日銀が介入して国債を購入すれば金利の上昇をある程度は抑制できるが、円安を加速させる圧力になるため、財務省による為替介入を組み合わせ、円安圧力を和らげるほかにない。

 選挙戦の間、政府と日銀はこのようにしてどうにか金融市場の混乱に抗うだろう。1月18日週の後半には、すでにこうした政策対応が行われている形跡もある。特に為替市場では、日米両当局によるレートチェックが行われた結果、1ドルが160円近くから急速に反転し、週明けには153円台を付けるなど、円高が急速に進んでいる。

 もっとも、今回の金融市場の混乱は、高市総理自らがトリガーを引いた自己実現的な混乱であり、投資家による高市総理に対する警告だ。総理自身が矛を収めない限り、金融市場の混乱は本質的には止まらない。また米国に貸しを作った対価として、何らかのコスト負担を求められる可能性は高い。こうした点を総理はどこまで認識しているのだろうか。