金融市場が求めるのはあくまで発言の撤回

 消費減税はまだ決まっていないとか、丁寧に説明すれば分かるという論法で政権を擁護する声もある。また、片山さつき財務相などはダボス会議の場で、主要国の要人に対して高市総理が掲げる“責任ある積極財政”の概要を丁寧に説明し、理解を得たといった旨の発言に終始している。そうアピールすることで当面の火消しに回っているようだ。

 2026年度の予算は過去に比べると拡張的でないという論者もいるが、問題はその後の財政運営がさらに拡張的になる可能性があることだ。投機筋はそれを見越しているため、日本国債を売り、円を売る。場合によっては株も売る。こうした地合いを安定化させるためには、高市総理は消費減税構想を撤回して投資家の不安を和らげる必要がある。

 だが、そうしたメッセージを、高市総理は発することができないだろう。少なくとも選挙戦のうちには無理だろうし、選挙で与党が勝利しても、それを翻すことはできないのではないか。一方、与党が敗北した場合、政治にまとまりが欠ける中で、バラマキの機運だけが高まる。そう判断すれば“日本売り”に拍車がかかるだろう。

 最大の問題は与野党ともにトラスショックという先行例から何も学ばず、バラマキに突進していったことにある。財務省による為替介入にも日銀による国債の買い支えにも限界があるため、事態が収束せず、漫然と長期化する恐れが意識される。確かに“高市ショック”であるが、それを誘発したのは政治全体の責任と言えるのではないか。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。