円安で喜ぶのは一部の個人投資家だけ

 高市財政を念頭に入れたインフレヘッジとしての株高は既に進行している。衆議院解散を検討しているとの一報が入ってから、日本の株価は上昇に弾みがついた。株高に沸いているから“日本売り”など生じていないという論者もいるが、この株高こそが、実は危うい現象である。

 国債の売り、つまり金利の急騰が国民生活に悪影響を与えるまでには時間を要する。一方、円相場や株式相場の場合、円相場が下落していても株式相場が上昇していれば、個人投資家を中心に高揚感が高まるため危機感が高まらない。むしろ一段の円安を望む声すら上がるわけだが、高インフレに喘ぐ国民には一段の円安など受け入れがたい。

 金などの貴金属の価格が高騰しているのも、インフレヘッジの流れの一つだ。貴金属は確かに信用力が強く、世界中でインフレヘッジの観点で買われている。日本の場合、円安が進んだことで、その流れに一段と拍車がかかっている。その結果、昨年9月に1グラム2万円だった金価格は、年明けに2万7000円まで上昇した。

 高市総理の経済ブレーンたちは、高インフレと円安は無関係であるとか、円安であれば外貨建て資産の評価益が増えるだとか、一部の個人投資家だけを念頭に置いた発言に終始する。また長期金利の急騰に関しても、グローバルに生じている問題であり、高市ショックなど生じていないと喧伝するが、それを信じる現役の市場関係者はまずいない。

 確かに長期金利はグローバルに上昇しているが、その中でも日本の上昇ピッチは速い。そして名目GDP(国内総生産)の2倍を超える総債務残高を抱える日本にとって、長期金利の上昇が持つ意味合いは極めて大きい。総債務ではなく純債務で評価すべきだという声もあるが、純債務にしても日本の規模は圧倒的だという事実は変わらない。