東京都中央卸売市場の大田市場は花卉流通の中心的役割を担う
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(志田富雄:経済コラムニスト)

花の需要動向は景気に直結

 株価や金価格の上昇でマーケットが沸く一方、予測不能な米トランプ大統領の行動や停滞が続く中国経済などから、世界景気の先行きには不透明感が増している。果たして実体経済はどのような状態なのか。日本経済新聞で記者や編集委員をしていた時期から、景気の変化を見る上で注目してきたものがある。

 それは、花卉(かき)、すなわち切り花などのフラワー市場だ。物流拠点であるオランダを中心に南米やアフリカ、中国、ベトナムといった産地が台頭し、国際的な取引が拡大している。日本市場にもカーネーションやキクなどの輸入品が浸透しており、市況は世界経済の今を映し出す。

 メディアではあまり注目されないが、そのフラワー市場は昨年来、低迷している。背後にあるのは、経済が混迷する中国の安値輸出と物価高による個人消費の変調だ。

 筆者が花卉の価格に注目する理由の一つは、水産物や野菜、果物、食肉とともに全国の卸売市場で取引され、相場に透明性があることだ。中でも東京都中央卸売市場の大田市場(大田区)が中心的な役割を担う。大田市場で花卉を取引する施設はやはり全国の中心的な存在である青果(野菜と果物)の施設と湾岸道路を隔てた別棟にある。

 2番目の理由は需要動向が景気に直結していることにある。フラワー市場で単価の高い商品はホテル・旅館、ブティックなどが支え、手頃な価格帯は専門店やスーパーで購入する個人客が消費する。花は華やかさとともに心に潤いをもたらしてくれるが、経営や家計が苦しくなると真っ先に消費が切り詰められてしまう、儚い存在でもある。そのため、商品市場の中でも花卉は景気の変化を敏感に映す「景気敏感銘柄」と言える。

 長年の取材先である大手卸、大田花きの磯村信夫会長に話を聞くと、花卉相場は昨年春あたりから変調を来し、以来、相場は低迷したままだという。

大田花きの磯村信夫会長。1989年設立の大田花きで94年から社長を務め、昨年から現職。花卉振興や卸売市場問題にも注力する