日本で食されるほとんどのウナギは養殖されたもの(写真:WeisPhoto/Shutterstock.com)
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 野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約締約国会議が閉幕した。その焦点は欧州連合(EU)などが提出したウナギ取引の規制強化案だった。すでに規制対象になっているヨーロッパウナギ以外のウナギも全て規制の対象にするとの内容だ。

 10月27日の採決で提案は反対多数で否決され、12月5日の本会議で正式に規制強化の見送りが決まった。国内の関係者からは安堵の声も聞かれるが、ウナギの密猟や不正流通は後を絶たない。従来のニホンウナギだけでなく、アメリカウナギまで食べるようになった日本には国際管理を徹底させる責任がある。

(志田富雄:経済コラムニスト)

なぜ規制対象に水産物が目立つのか

 近年、新たにワシントン条約の規制対象になるものには、サメやナマコなど水産物が目立つ。不思議に思う人がいるかもしれないが、生息数が減少した陸上生物はおおよそ規制(付随書に記載)される一方、科学調査によって海洋生物の減少が明らかになってきたことが理由に挙げられる。加えて、食料源として消費されるのが日本を中心とした国々に限られる海洋生物だと、欧米が商業取引の規制を提案しやすいことも指摘される。

 2010年にカタールで開かれた締約国会議では、大西洋クロマグロについて商業目的の国際取引を禁止にする、最も厳しい付随書1への掲載をモナコなどが提案。この時も日本は土壇場まで参加国に自国の主張を説明し、何とか否決に漕ぎ着けた。

 日本は、水産物は科学的な資源評価に基づいて漁業国が資源を管理し、持続的に利用すべきだと繰り返し主張してきた。食料源である水産物をゾウやパンダと一緒に扱ってもらっては困る、というのが本音だ。

 ワシントン条約はミンククジラなどの鯨類も規制対象(付随書1)にしているが、日本はその決定を留保し、国際捕鯨委員会(IWC)からも脱退して2019年に沿岸で商業捕鯨を再開した。

 しかし、日本政府が主張する「科学的な資源評価に基づく資源管理」は簡単なものではない。クロマグロやウナギなど広い海域を移動する水産物の管理は各国の協力が必要になる。