イカも食卓から遠ざかってしまうのか…(写真:K321/Shutterstock.com)
(志田富雄:経済コラムニスト)
国内スルメイカ漁、ピーク比で40分の1以下に
大衆向けの海の幸といえば、読者の皆さんはどんな魚介類を思い浮かべるだろうか。サンマやサバ、アジ、スルメイカあたりの答えが多いと思う。ところが、サンマの不漁は長期化し、サバやアジも思うようにはとれない。長い間、加工原料としても重宝されてきたスルメイカの漁獲量も急減した。国産はマグロやタイと単価で並ぶ高嶺の花となり、「さきいか」などの原料にはとても使えなくなった現実がある。
私が日本経済新聞社で長い間所属していた旧・商品部は、原油などの国際商品だけでなく、国内の卸売市場で扱う食品も担当分野だった。その中に豊洲市場(東京都中央卸売市場)などで取引する水産物があった。食品を取材した経験も多いので、「原料はどこの産地かな?」と、ラベルを見る癖がついてしまっている。
ビジネスパーソンがほっと一息つく出張帰りの新幹線。缶ビールのお供として「さきいか」や「あたりめ」は定番商品だ。主原料のイカはどこの産地か、ラベルを確認したことはあるだろうか。もっとも多いのは「中国」で、「さきいか」には「ペルー」も目立つ。国名は出さずに「輸入」という表示もある。気になった方は今度チェックしてみてほしい。
ではいつから輸入品を使うようになったのか?
疑問に思ったので旧来よりお世話になっている食品メーカーのトップに聞いてみた。「昨日今日の話ではなく、1990年頃から輸入依存が高まった」という答えだった。
国内のスルメイカ漁は1968年に67万トン近い生産量を記録した。ところが、そこから80年代半ばまで大幅に減少。90年代はいったん持ち直したものの、ここ四半世紀は減少が止まらず、23年、24年と2年連続で2万トン以下まで落ち込んだ。ピークに比べると40分の1以下しか獲れない惨状だ。
(出所:水産庁、全国漁業協同組合連合会)
水産庁の調べで、1kgあたり単価(産地=主要漁港価格)は2008年比で5倍近くに跳ね上がった。高騰が騒がれているコメの比ではない。地域の特産品にはなっても、スーパーやコンビニなどで庶民が購入する商品の原料には高くてとても使えない。
では、どのようなイカを使っているの?と疑問に思うだろう。