クロード・モネ《かささぎ》1868-69年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 Photo © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF
目次

(ライター、構成作家:川岸 徹)

自然光の移ろいに魅せられ、その美しさをカンヴァスにとどめようと生涯をかけて探求した印象派の巨匠クロード・モネ(1840–1926)。モネの作品41点を含むオルセー美術館所蔵の約90点に、国内の美術館や個人所蔵作品を加えた合計約140点で、風景画家としてのモネの魅力に迫る展覧会「モネ没後100年 クロード・モネ ―風景への問いかけ」がアーティゾン美術館で開幕した。

人気作《かささぎ》が4度目の来日

 アーティゾン美術館で開幕した「クロード・モネ ―風景への問いかけ」に、オルセー美術館所蔵の《かささぎ》が来日している。この作品には、マネやルノワールとともに制作に励んだアルジャントゥイユ時代の作品や一連の「睡蓮」シリーズに見られるような明るさや幸福感、華やかな色彩はない。

 それゆえ「モネの異質な一枚」といわれることも多いが、モネの画業を辿るうえで欠かせない重要作であるとともに、日本での人気がひときわ高い作品でもある。筆者が知る限り《かささぎ》は「ジャポニスム展:19世紀西洋美術への日本の影響」(国立西洋美術館、1988年)、「大回顧展 モネ 印象派の巨匠、その遺産」(国立新美術館、2007年)、「オルセー美術館展 印象派の誕生―描くことの自由―」(国立新美術館、2014年)に続いて、今回が4度目の来日になる。

《かささぎ》の制作時期は1868年から翌69年にかけて。後に印象派と呼ばれる若き画家たちが新しい表現を模索しながら研鑽を積んでいた時期にあたり、当時20代後半だったモネもサロン(官展)入選を目指しながら、風景、人物、静物など様々な画題に挑んでいた。

雪景色の「白」をどう表現すべきか

クロード・モネ《戸外の人物習作-日傘を持つ右向きの女》1886年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 Photo © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Stéphane Maréchalle/ distributed by AMF

 そんなモネの関心を大きく引いた画題のひとつが雪景色だ。従来の絵画では雪の色は基本的に「白」という固有色で表されてきたが、モネをはじめ、ルノワールやシスレーといった新時代の画家たちは、雪景色を目に映るままに表そうとした。太陽の光を受けて様々な色に輝き、日陰では灰色や黒に沈む雪面。若き画家たちは試行錯誤を繰り返しながら、「雪の効果」を描き出そうとしたのである。

 1867年の1月(おそらく)、モネはノルマンディー地方に滞在し《荷車、オンフルールの雪道》という作品を描いた。トルーヴィルからオンフルールに向かう雪道を、一台の馬車が行く。道の左手にはサン=シメオン農場があり、家屋の屋根は雪で覆われている。

 田舎の雪景色をモネは白一色ではなく、青みがかった色彩のトーンで巧みに表現。光を受けた雪面は白く、陰の部分は青みが深い。そうした雪面の微妙なバリエーションにより、モネは画面に目に映ったままのリアルな風景を再現した。