2025年1月22日、プロ棋士編入試験5番勝負の最終局で柵木幹太四段(右)に敗れ、対局を振り返る西山朋佳女流三冠 写真/共同通信社
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(田丸 昇:棋士)

最後の難関「三段リーグ」

 将棋のプロ棋士になるには、棋士養成機関の奨励会(6級~三段の9ランク)に入って四段に昇段することが条件である。奨励会員は東西で約200人。階段を上がるように昇級と昇段を重ねても、最後の難関が平均40人もいる三段リーグだ。半年ごとのリーグ戦(各18局)で、成績上位の2人が四段に昇段する。原則として年間で4人だけが棋士になれる、倍率が20倍もの「狭き門」である。

 現在の将棋界の絶対王者である藤井聡太六冠(23)は、2012年9月に奨励会に6級で入会。4年後の16年10月に14歳2カ月の最年少記録で四段に昇段して棋士になった。

 将棋界のレジェンドである羽生善治九段(55)は、1982年10月に奨励会に6級で入会。3年後の85年12月に15歳で四段に昇段して棋士になった。

 ただ藤井や羽生のように、若くしてスピード出世したのはごく一部。大半の奨励会員は三段リーグの厚い壁、年齢制限規定(原則として25歳)によって、奨励会を退会していくのが現実だ。

受けるのも難しい棋士編入試験

 女流棋界の二強である西山朋佳白玲(30)、福間香奈女流五冠(33)は以前に奨励会に在籍。三段リーグで奮闘したが、四段昇段には至らなかった。

 その後、福間と西山は女流棋士として特別参加したプロ公式戦で、所定の成績を挙げて「棋士編入試験」を受ける要件を満たした。約20年前に制定された社会人や女流棋士を対象にした制度で、これまでに瀬川晶司六段、小山怜央四段など、4人の強豪アマが合格してプロ棋士に認められた。

 棋士編入試験を受ける要件は、プロ公式戦の直近の成績が10勝以上、勝率は6割5分以上。ハードルはかなり高い。

 2021年から22年にかけて、福間(当時の姓は里見)女流五冠は若手精鋭らに勝ち、棋士編入試験に初めて臨んだ。直近の5人の新四段の棋士との五番勝負で、3勝すれば合格してプロ棋士に認められる。

 福間のプロ公式戦での成績は、勢いやフロックの結果ではない。私こと田丸九段は、棋士になれる実力を有していると高く評価し、編入試験に合格すると思った。

 しかし福間は22年8月からの五番勝負(1カ月に1局、持ち時間は各3時間)で、新四段たちに3連敗して不合格となった。

 私が見た感じは、福間は絶対に負けられない緊張感から精彩を欠き、全体的に指し方が硬かった。過去のプロ公式戦の対局とは違う空気があったようだ。