AIが物理的な仕組みを理解する「世界モデル」に注目が集まる(筆者がChatGPTで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

 2026年2月18日、AI業界に衝撃的なニュースが走った。スタンフォード大学の著名教授で、「AIのゴッドマザー」と称されるフェイフェイ・リーが率いるスタートアップ「World Labs」が、設計ソフト大手オートデスクからの2億ドルを含む総額10億ドルの資金調達を発表したのだ。企業評価額は約50億ドルに達するとされており、同社がまだ製品を本格展開して間もないことを踏まえると、その金額は際立っている。

 同じころ、フランスではディープラーニング技術の基礎を築いた1人として知られるヤン・ルカンが設立した「AMI Labs」が、製品リリース前にもかかわらず30億ユーロの評価を受け、5億ユーロの資金調達を進めているとの報道がなされた。この2つの企業に共通するもの、それは「世界モデル(World Models)」と呼ばれる次世代AI技術を手掛けているという点だ。

 なぜいま、世界のトップ研究者たちとその後を追う巨額の資本が、この技術に殺到しているのだろうか。

「世界モデル」とは何か?

「世界モデル」とは、AIが物理的な環境の仕組みや因果関係、物理法則を自らの内部に再現し、シミュレーションする能力やアーキテクチャのことを指す。

 人間が「ボールを空中に投げれば落ちてくる」「混雑した場所では人とぶつからないように歩く」といった物理的・空間的な直感を自然に働かせるように、世界モデルはAIに一種の「常識」となる内部モデルを与える技術だ。この枠組みは、2018年のデイビッド・ハとユルゲン・シュミットフーバーの研究にその起源を持つ

 技術的には大きく3つのコンポーネントで構成されると理解されている。