ふくおかフィナンシャルグループ 取締役社長の五島久氏(撮影:榊水麗)
2026年3月期決算で3期連続の増益を見込む九州の大手地方銀行グループ、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)。2025年4月には新たな理念体系を発表し、さらに同社では初となる「10年間の長期戦略」を始動させた。なぜ、好業績のさなかに理念を刷新し、長期の羅針盤を必要としたのか。その背景には、バブル崩壊後の停滞期に人事畑を長く歩んだ五島久社長ならではの「個人の幸福」と「企業の成長」をリンクさせる独自の経営哲学があった。詳しい話を同氏に聞いた。
「個人の好循環」なくして「企業の好循環」なし
──ふくおかFGでは、2025年4月に新たな理念体系を制定しました。社長就任から3年が経ったこのタイミングで、なぜ組織の根本である理念体系を見直したのでしょうか。
五島久氏(以下敬称略) 理由は大きく2つあります。1つは、社会の変化のスピードと振れ幅が劇的に大きくなっていることです。
技術革新や地政学リスクなど不確実性が高まり、3年先はおろか1年先も見通すのが難しい時代になっています。だからこそ、迷った時に立ち返るべき軸、いわば「北極星」のような揺るぎない指針を言葉にしておく必要があると考えました。
もう1つは、私自身の経験に基づく「組織と個人の在り方」への思いです。私は銀行員生活40年のうち約12年間は人事部門に在籍していたのですが、そこでバブル崩壊後の厳しい時期を経験し、以来「どうすれば社員一人一人がモチベーション高く働けるだろうか」と常に自問し続けてきました。
そして、私なりに導いた結論が「企業の好循環」と「個人の好循環」をつなげることです。企業がお客さまに価値を提供し、収益を上げ、それを投資や処遇改善に回す「企業の好循環」。働く個人が自己実現を目指し、成長を実感し、経済的にも報われる「個人の好循環」。この2つをリンクさせることが重要であり、かつ、組織を率いる社長の役割だ──私が社長に就任してから、改めてそう思い至ったのです。
そこで、会社が目指す方向と、社員個人が目指したい方向が重なっている状態をつくるために、全員が共感できる「言葉」が必要だと考えました。
この思いを発端に生まれたのが、新たな理念体系です。「わたしたちの価値観」「FFG(ふくおかFG)の存在意義」「創りたい社会」という大きく3つで構成されており、会社が目指す方向性を示すと同時に、社員一人一人のよりどころにもなるものです。この理念体系により、企業と個人それぞれの好循環をつなぎ合わせていくのが狙いです。






