なぜいま「世界モデル」に注目が集まっているのか?
第1は、LLMの根本的な限界への直面だ。
2024年に発表された関連研究において、「LLMはすべての計算可能な関数を学習できるわけではなく、一般的な問題解決器として使用された場合、必然的にハルシネーションを起こす」ことが数学的に証明された。現在では、テキストの予測のみに依存するLLMをどれだけ巨大化させても、真の汎用人工知能(AGI)には到達できないという認識がAI業界に広まっている。
第2は、冒頭で紹介したような、世界的AI権威による巨額の資金調達だ。
2026年初頭の数か月だけで、世界モデル関連のスタートアップに13億ドル以上の資金が流入した。その好例が、フェイフェイ・リーとヤン・ルカンの活動というわけである。これほどの大物研究者たちが競うように独立し、同一の技術領域に集中していることが、業界の方向性を示す強力なシグナルとなっている。
第3は、大手テクノロジー企業による技術的ブレイクスルーの連続だ。
Google DeepMindは2025年8月に「Genie 3」を発表し、2026年1月29日には米国ユーザー向けに「Project Genie」として一般公開した。テキストや画像から毎秒24フレーム・720pのリアルタイム3D仮想空間を生成できる初の世界モデルだ。
NVIDIAは同年のCESで物理AI向けプラットフォーム「Cosmos」を発表。2000万時間の動画から得た9000兆トークンで訓練されており、2026年1月時点でロボット企業や自動運転企業から200万回以上ダウンロードされている。Metaも2025年6月11日に「V-JEPA 2」を発表し、潜在空間での予測により従来モデルの30倍の処理速度を実現した。
第4は、ロボティクスや自動運転に不可欠な「データ不足の解消」という課題への対応である。
現実世界で危険なシナリオのデータを収集することはコストが高く、場合によっては物理的に不可能だ。世界モデルはそうしたシナリオを無限にシミュレーションできる究極のテスト環境として、AIの身体的な能力を根本から変えようとしている。
Wayve社のGAIA-3は、合成テスト(世界モデルが生成した仮想シナリオ上でAIの判断を検証するテスト)でのエラー率を従来の5分の1に削減したと報告されており、その効果の大きさが実証されつつある。
世界モデルの普及は、短期・中期・長期の3つのフェーズで段階的に進むとみられている。